12. 夜景 ページ12
「 ほい 、頼んだでェ〜 、」
「 ちょ 、うわっ 」
葛藤する脳内 。それを遮るかのように 、大先生が ふらふらと覚束無い足取りの藤宮を俺に預けてきた 。
ずしり 、と背中に重りが乗せられ 、香水では無い 、優しい柔軟剤の 石鹸の香りが鼻を擽る 。
『 んわ 、!? 不破くんあったけ - ··· 、ぎゅ 〜 っ 』
「 Aぎゅ - 好き何やって〜 、そ - やって連れてったって 、? 」
蕩けた声でぎゅっと身体を密着させ 、華奢な腕が腹に回された 。逃げられない 。
此処で断るのも 、寧ろ面倒なことになりそうだ 。
「 ··· しゃ - ねえなぁ 、」
大人しく折れ 、彼女を背負い直した 。
コソコソと後ろで 女共が何か言っているのが見える 。本当に陰口が好きな生物だな 。
早く店を出よう 、とゆさゆさと身体を揺らしながら歩き始める 。
普通に重いのだけれど 、平均体重程度だろう 。この程度 抱えられない訳でもない 。
道路へ出ると 、呼んでいた2台のタクシーが見えた 。
顔色が酷いエーミールをタクシーに乗せ 、先に帰らせると もうひとつのタクシーの後ろに藤宮 を横たえる 。
前に座ろうかとも悩んだが 、酔っ払いを1人後ろに乗せて嘔吐られても困る 。
渋々隣に座り込むと 、突然隣の其奴が ぎゅぅうっと身体に抱きついてきた 。
「 ッ 、!? おい 、!? 藤宮 !!」
『 ひとはだ - ··· 』
思わず仰け反る俺に対し 、其奴は一言発すると すやすやと寝息を立て始めた 。どんな神経してるんだ 。
冷めた声で運転手から 「 どちらへ ? 」 と訊ねられ 、忘れていたと顔を上げる 。
大先生から聞いていた藤宮の住むマンションへ指定し 、動き始めた車に揺られる 。
1人で勝手に酔い出して 、店で寝て 、俺に態々運ばせて 。
傍迷惑な奴だな 、帰る方向が同じじゃなければ断っていたところだ 。
ぶる 、と車内の寒さに肩を震わせる 。何だこの気の利かないタクシーは 。運転手は酷く厚着をしており 、暖房は不要な様子で 付けられていない 。
静かに舌打ちし 、自分の手で腕を抱え 温めようとすると 、腕が藤宮に捕まっていることに気づいた 。
「 お - い ··· 、」
反応する訳もない 。はぁと溜息を付き 、何か暖まれるようなものがないかと見回す 。
ふと目についたのは 、俺に幸せそうに抱き着く藤宮 。
最初に抱きついて来たんはそっちやからな 。
と 、無言で寝ぼけた彼女の背中に手を回すと 、流る夜景に瞳を揺らした 。
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朔雨(プロフ) - 海月さん@睡眠不足さん» 御指摘大変感謝致します、!確認不足で申し訳御座いません...。少々機械音痴故ガバって仕舞って居た見たいです。修正致しました! (2020年7月8日 21時) (レス) id: 638a85cc86 (このIDを非表示/違反報告)
海月さん@睡眠不足(プロフ) - コメント失礼いたします。(飼い猫)(名字)など、名前の変換が上手くいっていないようです。ご確認宜しくお願い致します。 (2020年7月8日 20時) (レス) id: d3392eea98 (このIDを非表示/違反報告)
ルマ(プロフ) - 朔雨さん» いえいえ!私は作者様に返事を貰えて嬉しいです!これからも頑張ってください! (2020年7月5日 18時) (レス) id: 93c65e8f36 (このIDを非表示/違反報告)
朔雨(プロフ) - ルマさん» わぁああ 、ありがとう御座います 、!コメント頂けてめちゃくちゃ嬉しいです( (2020年7月5日 18時) (レス) id: a38760535c (このIDを非表示/違反報告)
ルマ(プロフ) - え、好きです() (2020年7月5日 18時) (レス) id: 93c65e8f36 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:朔雨 | 作成日時:2020年7月3日 23時