あの時の知らないふり ページ30
北斗くんが、テレビ画面に映ったのを驚きと戸惑いがありながら見つめて、2週間。
今日は、彼と会う。でも、私は何故だか心構えが出来ていなかった。
待ち合わせは、いつもの静かなバー。
〔久しぶり。A。遅くなってごめん。〕
そう私に声をかけて、彼は隣に座った。
「久しぶり！元気だった？」
彼を横から見た時の少しだけ垂れて見える一重の目と、高い鼻が好き。あと、優しい声も。
元気だった？なんて、声をかけた私の声は、緊張しているのか少しだけ掠れていた。
〔こないだは、帰っちゃってごめんね。早く会いたかったんだけど、なかなか時間取れなくて。〕
「ううん、大丈夫。仕事忙しそうだね。大丈夫？」
〔...ん？あぁ、仕事ね。大丈夫。ありがとう。〕
少しだけ近況報告をしながらお酒を楽しむ。
「...あのさ！」〔...あのさ。〕
「あ、ごめん。何？」
先にいいよ、なんて彼から言われて一番聞きたかったことを聞いた。
「これから、どうする？、家とか、さ。」
〔.....俺もそれ話したくて。そのことなんだけど、もう一回、考え直さないかな？.....もちろん、考えてるよ？Aのことも、ちゃんと。〕
何か本音を隠すように辿々しく話す彼の顔を見れなくて、頭が真っ白になった。
結婚も見据えて、同棲しようって話したじゃん。
どこに住もうかなんて、笑ってたじゃん。
言いたいことはたくさんあるのに、何も言葉が出て来ない。
否定する言葉も、肯定する言葉も。
あの、仕事だって帰った日に、彼の電話越しから聞こえた可愛らしい声に気づかないふりしたんだよ。
なのに、私のことを考えてる、なんて言わないで...
まだ、頭は真っ白のままだった。
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ユウ(プロフ) - chiiiさん» コメントと、とても嬉しい言葉ありがとうございます。ゆっくり更新にはなりますが、お付き合い頂けたら嬉しいです。 (2021年3月9日 2時) (
レス) id: 5c9c115c79 (このIDを非表示/違反報告)
chiii(プロフ) - お話一気に読みました！更新、楽しみにしてます。 (2021年3月7日 22時) (レス) id: 461d1077d7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ユウ | 作成日時：2021年2月24日 17時
