83 ラストリゾート ページ39
「世界大会という大舞台で豪炎寺君は人一倍努力しています！それにッ今辞めさせなくても！
先生は豪炎寺君の事を何も分かっていない！
息子の思いをッなんにも！
＿先生ッ！」
息が切れるまで必死に訴えた。
グッと握り拳を作り、顔に熱が集まるのを感じた。
先生は一度足を止めたと思えば白衣の埃を払う勢いで軽く私の言葉を流し、階段を淡々と降りた。
病院という場所で声を荒げ、所々で金切声を出した事を不思議と後悔しなかった。
今胸の内に残っているのは怒りだけで。
円堂君の言葉に気にも止めず、豪炎寺君の気持ちを汲み取ろうとしない、澄ました行動に嫌気が指した。
そもそも豪炎寺君と先生でこんなやり取りが始まっていたなんて想像できなかった。
豪炎寺君の試合に掛ける思いが強い理由がやっと分かった。
私達は「世界へ行きたい。」
豪炎寺君は「世界へ送り出したい。」
必殺技に対して酷く燃えていて、泥のフィールドに対して全く躊躇しなかった。
＿豪炎寺君にとって、この試合は最後の手段なんだ。
「A。」
「…A。」
肩に手を置かれた事でやっと円堂君に気が付く。
円堂君が私の手に触れたと思えば、優しく指を触っていた。
「握り過ぎたら駄目だ。」
右手を開けば爪の跡がクッキリと残っていて、左手を開けば以前作った切り傷がまだ残っていた。
それからはよく覚えていない。
一先泥を落とさなければと風呂場に向かう。
病院を出た後に感謝を伝えてもらった事、途中で円堂君に先に帰ってくれと言われた事位。
円堂君の絶望を知った表情がどうしても頭から抜けず、今シャンプーをしたかすら分からなくなってしまった。
2日目、3日目と泥と永久に戯れてはシャワーと格闘する事を繰り返していく内に、段々とドリブルにも慣れた。
泥の中で技が打てたらと思い、左に回転しようとすれば右から倒れ込んだ。
耳鳴りが脳内に駆け巡り、今度は栗松君にケラケラと笑われて羞恥心を抱いた。
円堂君は何処か集中力を欠いていた。
特にシュートが行ったのに全く気づかず、顔面を強打した時は真っ先に駆け寄った。
「これで揃ったな。」
円堂君の明るい笑顔と眩しい太陽がリンクした。
ここ2日間無理に笑っているような様子も見られた。
恐らく豪炎寺君の事情を知っているのは円堂君と私だけ。
辛いのはきっと、長い時を共有した円堂君だ。
円堂君には沢山助けて貰った。
なら今の私には、優しく拳を作って決意を固める事くらいしか出来ない。
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ビジュ(プロフ) - ほうじ茶さん» コメントありがとうございます！不定期更新となってしまいますが、ほうじ茶さんのご期待に応えるためにも少しずつ更新していけるように頑張りたいです(◍•ᴗ•◍) (2月29日 23時) (
レス) id: 529a911b17 (このIDを非表示/違反報告)
ほうじ茶 - めっちゃ面白いです！！続き待ってます！！ (2月29日 20時) (レス) id: 47dba8b665 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ビジュ | 作成日時：2024年1月15日 23時
