77 1年ぶりの披露 ページ33
「A、みんなに見せたいものがあるんじゃなかったか。」
鬼道君の言葉にザワザワと周りはこちらを見つめる。
暗く少し濁ったような言葉を発しにくい雰囲気が払拭された。
やっぱり鬼道君の影響力は凄い、一言でここまで空気を入れ替える。
その位みんなは鬼道君の事を強く信用している。
ただわざわざ注目を集める必要は無いんじゃないかと思ったが、みんなからのアドバイスが貰える。なら今やるべきだ。
「うん、必殺技。ドリブル技なんだけど…」
「わぁ、Aさん遂にできたんだね。
じゃあ俺が走るから必殺技見せてよ。」
「基山君、ありがとう。」
鬼道君からお願いされていたのはディフェンス技。以前吹雪君に技のアイデア出し等を手伝ってもらっていたのもディフェンス技。
非難の声が飛ぶかと思い目をギュッと目を瞑ったが、多くの賞賛の声が飛んできた。
特に技を間近で見せた基山君は嬉しそうに頬を上げて、コロッと表情を変えては笑ってくれた。
ボールを基山君から受け取り、大股で距離を取る。
つま先を地面に軽く押し付け、何故か少し山ができていた砂を強く退かす。
好奇心を含んだ目で見る人、疑い深く見る人等の視線を感じた。
少し不安が入り交じるが、それ以上に早く見せたいという自信が勝った。
「じゃあ行くよ。」
手を口元に当てて声を通りやすくした彼の言葉に大きく頷く。
彼が走り出しては最後。
右のつま先からボールを蹴り出す。
彼との距離感を大まかに測り、右足を付いた所を狙った。
ボールをキープすることだけは絶対に忘れずにクルッと左に一回転。
利き足の右足で踏み込みながらそのスピードのまま最後に左に半回転。
「ムーンッ、エッジ！」
低い体制のまま握り拳を作った。
成功だ。
その証拠としてバチバチと青い火花が空気中を散策していた。何より目の前にあったのはみんなの口の空いた表情と、ポトンと転がるボールだけだった。
「凄いじゃないかA！」
「あぁ、この技があれば韓国戦もきっとスムーズに行くはずだ。」
実力者である基山君をいとも簡単に抜かし、円堂君と鬼道君に温かい言葉を投げかけてもらった事で嫌でも頬が緩んだ。
「吹雪、俺らも負けてられないな！」
「うん。早く成功させよう！」
一気に緊張が解れたことでより喜びが上乗せされた。
その位、今の私はこの技と共に韓国戦に出たいのだと気付かされた。
この技を自分のモノに出来れば、監督が私の隣で歩いているようで酷く安心感があった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 72人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ビジュ(プロフ) - ほうじ茶さん» コメントありがとうございます！不定期更新となってしまいますが、ほうじ茶さんのご期待に応えるためにも少しずつ更新していけるように頑張りたいです(◍•ᴗ•◍) (2月29日 23時) (
レス) id: 529a911b17 (このIDを非表示/違反報告)
ほうじ茶 - めっちゃ面白いです！！続き待ってます！！ (2月29日 20時) (レス) id: 47dba8b665 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ビジュ | 作成日時：2024年1月15日 23時
