48 木星は夜、直視可能 ページ4
「…答えにくかったらいいんだけどね、エイリア学園って女子選手も居たよね？」
「うん、僕のチームにも。」
「＿正直に、答えてほしいな。
今、私が選ばれて良かったって思える？」
足元に感覚がない、ボールが返って来ない。
あまりにも予想通りすぎて乾いた笑いがどこからか溢れ出る。
心の何処かでは分かりきっていたことだった。どうして私が選ばれたのか疑問を抱えているだろうに。
それでも、激励の言葉が欲しかった。
だから優しくて、人当たりが良い基山君に困らせるような質問をした。
彼にしかこんな話は出来ないと思った。
彼の目が光ったことが分かった。こちらを見ている。逸らさずにジッと見つめると、ボールが返ってきた。
「…最初はね。
何でこの子何だろうって思ったんだ。
今までAさんの名前聞いたことなかったしね。」
「…うん。」
なんて、言えば良いのか。
今度は私がボールを留めたまま、彼の話に耳を傾けた。ふと財前さん達との事を思い出す。
サッカーを辞めてたんだから、名前なんて聞かなくて当然だ。
「でも、今は違う。」
もう一度彼の目を見る。期待していた言葉に胸が踊る。夜空が彼を照らしている。
スポットライトに、基山君は照らされていた。
今は彼の独壇場だ。
「なんでこんな実力のあった子を知らなかったんだろうって思ってる。
今もこうやって一緒に練習してくれてるし、必殺技も頑張って作ってるじゃないか。
もっとさ、自分に自信持ってよ。」
ペラペラと話し出す基山君を見て思わず瞬きを繰り返す。足下には先程と違い感覚があるままで、焦ってボールを渡した。
「ありがとう基山君。
…もうすぐ緑川君来るよね？
最後にさ。基山君の必殺技、見せてくれないかな。」
無理難題な欲求を一方的に押し付けた。
疲れたから肩を貸してと言った時も、一緒にパス練しようと言った時も。
それでも彼はまた承諾してくれて。ゴールネットの前に立った。
「じゃあ、行くね。」
うんという私の合図に勢い良く跳び上がり、空に呑み込まれる。いや、基山君が空を呑み込んだ。
夜空という長い暗闇を一つの技が通り抜けた。
「流星、ブレードッ！」
始めて彼の技をこんなに間近で見た。
今までベンチだったり、ミッドフィルダーの位置で見たりしてたから。ちゃんと分からなかった。
傾かない重心、七色に輝く美しさ、ゴールに叩き入れる迫力。
誰もを魅了し、サッカーをも魅了する。
思い出した、これが必殺技かと、私の心も彼は突き抜けた。
49 終わりを知らせる走馬灯→←47 必殺技までのタイムリミット
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ビジュ(プロフ) - ほうじ茶さん» コメントありがとうございます！不定期更新となってしまいますが、ほうじ茶さんのご期待に応えるためにも少しずつ更新していけるように頑張りたいです(◍•ᴗ•◍) (2月29日 23時) (
レス) id: 529a911b17 (このIDを非表示/違反報告)
ほうじ茶 - めっちゃ面白いです！！続き待ってます！！ (2月29日 20時) (レス) id: 47dba8b665 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ビジュ | 作成日時：2024年1月15日 23時
