74 脳内フォーメーション ページ30
「3日程でしたが、お世話になりました。」
「オーバーワークをしない程度に。」
「あ、はい…」
大きなリュックにユニフォームやら何やらを入れた事で後ろによろける程になってしまった。
その中でも抱えているボールだけがボロボロで軽くて救いだった。
何も言い返せずに足元に視線を落とした。
…もうしばらくは病院にお世話になりたくない。
「…修也との最後の試合、頑張って下さい。」
「ぇ、も、もちろんです？」
最後という言葉に首を傾げたが、アジア予選最後の試合ということだと自己解釈した。
そうでもしなければ、先生の言葉を上手く汲み取れなかった。
1歩、2歩、3歩。
数歩歩いて最後に振り向いて会釈をした。
豪炎寺先生の小さく手を振る姿に、もう一度だけ深く礼をした。
少しだけ、リュックが軽く感じた。
短針が7時を指す。ちょうど起床時間。
シュミレーションは完璧、昨日何度も確認した。
私が治った事はまだ誰も知らない。
1度だけでも鬼道君のように司令塔になりたい。そして、ゲームメイクしてみたい事がたった今叶えられそうだ。
1.食堂に行ってみんなの驚いた顔をこの目でバシッと見る。(DF)
2.私のムーンエッジを見せる。(FW)
3.韓国戦にスタメンで出場。(МF)
4.見事勝利。予選突破！(GK)
よし、この流れを成功させる為に抜き足差し足忍＿
「A？Aじゃないか！
おーい、Aが来たぞ‼」
オレンジ色に輝くバンダナが、私の脳内フォーメーションを崩壊させた。
ゲームメイクの難しさを体全体でひしひしと感じた。
3日ぶりという短く聞こえる言葉も本当に長かったように感じる。
しかしまだまだ早朝で朝食を摂っている人が多いらしく、円堂君の声に駆け上がってきたのは鬼道君だった。
「A、治るまで1週間と言っていたが…」
「鬼道君。予定より早く治ったんだよ。
それに、見てほしいものもあるんだ。」
「…あぁ。本当に良かったよ。」
自分の口がこんなにも早く動くことに驚いた。
その位、必殺技を持つということが自信に繋がった。
今まではゴーグルで顔の表情が上手く見えなかったが、眉の下がり方や声色で意外と彼の感情を汲み取れることに気付いた。
今の鬼道君の表情を一言で表すなら「安堵」だった。
徐々に人が来るや否や私の名前を呼んでくれる人が集まって来た。
今日の夜、いつも何を考えて試合を動かしているのかを聞いてみたい。
少しだけ踏み付けていた靴の踵に気付き、左足を強く地面に打ち付けた。
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ビジュ(プロフ) - ほうじ茶さん» コメントありがとうございます！不定期更新となってしまいますが、ほうじ茶さんのご期待に応えるためにも少しずつ更新していけるように頑張りたいです(◍•ᴗ•◍) (2月29日 23時) (
レス) id: 529a911b17 (このIDを非表示/違反報告)
ほうじ茶 - めっちゃ面白いです！！続き待ってます！！ (2月29日 20時) (レス) id: 47dba8b665 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ビジュ | 作成日時：2024年1月15日 23時
