73 月の輝き方 ページ29
「か、監督…何でっ…！」
クルッと右に一回転して華麗に力を溜めてはそのスピードを生かし半回転して瞬く間に相手を置き去る。
美しさが強調された。気が付けば私の視界に監督はおらず、後ろに腕を組んでボールをキープしていた。
頭が真っ白になって口走るのが分かる。
金切り声が混じる。
開いた口が塞がらない、あの日の情景が映し出される。間違いなく色褪せていない、魅力が凝縮されていた。
「Aさん、練習しましょう。そして韓国戦に出場！」
口がパサパサと乾燥してきてやっと口を結んだ。
今の私はこの技が眩しすぎてきっと習得できない。
遠すぎる。
それに私はあと4日以上の猶予が残ってる。
駄目だ、きっとで＿
「昔はあんなに元気だったのに何だか無理をしているように見えます。
あんなに、好きだったのに。」
「そう…ですか。」
唐突な監督の語りに思考を止める。
昔なら。
スタメンから外れるなんてこと無かった。
コミュニケーションが取れなくなるなんて無かった。
技が出なくなるなんて、考えられなかった。
「一度。」
少し間を置いている。小さく、期待の深呼吸をしていた
「出来た事が出来なくなるなんて、私は信じません。貴方に意地でも受け継いで貰います!!」
太陽が月を反射した。
監督の目がギラギラと揺れ動く。
技に動かされてコロコロと転がったボールを追いかけて見つめた。
月は太陽が無ければ輝けない。
監督が太陽なら。私は月に＿
「意地でもッ、受け継ぎます!!」
血色の良い大きく弧を描いた監督の笑顔を見た。
何処からか湧いてくる自信も、衝動的に動きたくなる足も、蹴りたくなるボールも。
全てが2年ぶりだった。
か、監督ッ!今のって!
えぇ…、完成です。 正しく、私の技だ。
流石、私の教え子だ!
親子のような2人を何者かが見つめる。
その視線も、2人の歓喜の声も。
登り始める月と、もう時期沈み切る太陽の夕焼けに溶け出した。
＿
「著しく早いスピードで足の機能が戻っています。一体…」
「サッカーをしたい気持ちがあったからです、韓国戦。出ても良いですよね？」
「…明日、退院です。」
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ビジュ(プロフ) - ほうじ茶さん» コメントありがとうございます！不定期更新となってしまいますが、ほうじ茶さんのご期待に応えるためにも少しずつ更新していけるように頑張りたいです(◍•ᴗ•◍) (2月29日 23時) (
レス) id: 529a911b17 (このIDを非表示/違反報告)
ほうじ茶 - めっちゃ面白いです！！続き待ってます！！ (2月29日 20時) (レス) id: 47dba8b665 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ビジュ | 作成日時：2024年1月15日 23時
