70 謝罪に魅せられて ページ26
「A、今日楽しかった？」
2人に挟まれて中央を宛先もなくトボトボと歩く。
財前さんの顔はどこか少し沈んでいるように見える。
秋ちゃんに酷い光景を見せてしまったからという罪悪感からか、冬花さんを騙していたからか。
「A。今日困らせたかったわけじゃないねん。」
リカさんは眉は下がっているのに頬は上がっている。無理して笑っているように見える。
「A、最近大変そうだって鬼道が言ってて。」
「立向居から聞いた時はホンマにビックリしたで。入院って聞いて…」
今日私を強引に連れ出した2人の心境を読み取った。
1日中2人は私を気遣ってくれていた、正直2人とは大して接点が無かったのに。
だからこそ私は2人に本心をぶつけるしかない。
「本当に楽しかった、ありがとう。」
段々声が霞む、正直に言う事が何だか恥ずかしく思えて声が小さくなる。
思わず視線を下に落とすと2人は感嘆の声を漏らした。
「ホンマか！な、A。また一緒に行こうや！」
「いつでも誘って！リカと2人で飛んでくよ！」
太陽が沈み始める。
次はどこにいくだの、次はマネージャーも誘おうだの他愛のない話をした。
オレンジ色が空を埋め尽くそうとした時、病院が見えた。我に返った。
この2人、私のサッカーに期待してッ…
幸せに包まれた時、無力感が私を襲った。
こんなに2人は私に期待しているのにサッカーが好きかすら分からない。
そんな事を考えていると悟られてしまったら。もうこの関係には戻れない。
「わ、たし。サッカー続けられるかな。」
2人の顔が曇るのが嫌でも分かった。
心の中で一言呟く前に口が動いた。
それでもやってしまったという後悔は無かった。
「大丈夫だよ。Aは私達の誇りだよ。」
「ドンとぶつかって行けや、韓国代表なんてポーンや！」
「ぁ、ありがとう。」
声が震える。同じ言葉を繰り返したはずなのに、今度は何故か視界がモヤモヤと眩んだ。
昨日出るはずだった鬼道くんの優しい助けの涙と、今日の2人の優しい期待の涙が偶然同じタイミングで。流れてきてしまった。
ごめんねごめんねとパッと頭に浮かんだ言葉を連呼して顔を覆った。
2人を必殺技があると騙していた謝罪と、サッカーをしっかり愛せない謝罪と、今日上手く空気を読めなかった謝罪と。
積もりに積もった小さな謝罪が大きくなり、涙として流れてきた。
2人が飛び込んでくるのを最後に、強制的にオレンジ色に魅せられた。
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ビジュ(プロフ) - ほうじ茶さん» コメントありがとうございます！不定期更新となってしまいますが、ほうじ茶さんのご期待に応えるためにも少しずつ更新していけるように頑張りたいです(◍•ᴗ•◍) (2月29日 23時) (
レス) id: 529a911b17 (このIDを非表示/違反報告)
ほうじ茶 - めっちゃ面白いです！！続き待ってます！！ (2月29日 20時) (レス) id: 47dba8b665 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ビジュ | 作成日時：2024年1月15日 23時
