69 作戦失敗 ページ25
イナズマアイス。
まさに稲妻町のアイス屋と言った所だろうか。
茂みから取った木の棒を拾うも、2人への興味からポイッと捨ててしまった。
「か、壁山君…見えない…」
「すみませんッス、前どうぞッス。」
少し遅れを取ったことで壁山君の後ろに入ってしまう。
前を譲ってもらうと各々の表情が横からバッチリ見えた。
口に弧を描く人も居れば、顔を赤らめている人も居れば、ここからどうするんだろうという疑問から無表情の人も居る。
私は無論、2番目の回答だった。
ドンという効果音と共に、クッキーに包囲された色とりどりのアイス、クリームの上にさくらんぼ、いちごと置かれた。特大サイズのアイスだ。
2人だけではとても食べ切れる量ではない。
「俺も食べたいッス〜」
「い、今食べに行っちゃ駄目かな。」
「もしかしてこれって…！」
途中で食べに行けるかもという期待と、まさかあの王道の行動を取ってしまうのかという期待が入り混じってはまた顔に熱が集まる。
カップルの2人が飲食店にくればやる事は1つしかない。
冬花さんがスプーンを持っては何かを決心する。
アイスを小さく掬っては立ち上がる。
若干前屈みになり、円堂君の前に差し出した。
「ぁ、あーんだ!」
「イケーーーー！」
心臓がバクバクと鳴り響く。
自然と大きく口を開いては栗松君の肩に触れてでも前を見る。
壁山君はもう無理ッスと言って顔を覆った。
今は羞恥心なんて感じなかった、こんなにも緊張が高ぶる。
「男なら、女の気持ちを受け取るんやー！」
「なんのです？」
スーッと熱が引く、体温が下がった。
あまりの興奮で全ての音が遮断されていた。足音がまるで聞こえなかった。
ヨロヨロと左を向くと、秋ちゃんと春奈ちゃんが居た。
「い、今凄いと＿＿」
「A、一回黙って！」
アイス屋を指差す。
風丸君達を引き込んだように秋ちゃん達をこちらの世界に引き込もうとすると、何故か財前さんに口を塞がれた。
財前さんの努力も虚しく私が指した方向に2人は目を向けた。
秋ちゃんの表情と以前の憂い帯びた表情を重ねる。
一致した。
全てを悟った。よりお風呂上がりの様に体温が下がった。
やけに財前さんとリカさんが秋ちゃんにバラしてはいけない理由がポンと頭に浮かぶ。
「あ、バレた。」
ゆっくり前を向くと、冬花さんがこちらを直視していた。
作戦失敗。
私はリカさんと財前さんに連れられながら帰路に着くしかなかった。
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ビジュ(プロフ) - ほうじ茶さん» コメントありがとうございます！不定期更新となってしまいますが、ほうじ茶さんのご期待に応えるためにも少しずつ更新していけるように頑張りたいです(◍•ᴗ•◍) (2月29日 23時) (
レス) id: 529a911b17 (このIDを非表示/違反報告)
ほうじ茶 - めっちゃ面白いです！！続き待ってます！！ (2月29日 20時) (レス) id: 47dba8b665 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ビジュ | 作成日時：2024年1月15日 23時
