64 無理難題な謝罪 ページ20
規則的に奏でられた重みのこもった音と共に、私の許可を促す声が聞こえてくる。
雨が叩きつける静寂を覆した。
こんな雨の中誰が…？
ひとまずどうぞと許可を出すと、後ろで束ねられたドレッドヘアーとゴーグル。マントが靡いていた。
慌ててジャージとボールをどかして椅子を差し出そうとすると、俺がやるから大丈夫だと言ってくれた。
「…鬼道君？」
「A、体調は大丈夫なのか。
今日はあまりにも不自然に見えたからな…。」
鬼道君以外にも誰か居るのかと見回したが、たった1人で来たようだ。
…正直、彼と面を向かって話したことがない。
その特徴的な見た目から感情が読み取りにくいから。彼と真正面で話すことを避けていたかもしれない。
しかし見た目と反し、優しく語りかけてくる声色からは心配している色が滲んでいた。
今の彼に、嘘はつけない。
「…正直、あんまり良くないんだ。
1週間以上は参加できないや。」
「1週間以上か…」
場を和ませようとははと乾いた笑いを絞り出したが、彼はお構いなしに小さく決勝は…と呟いていた。
彼のような人は頭の切れる人は、すぐにその重大さに気づいた。どれだけ私の行動が滑稽で馬鹿馬鹿しかったのか。酷く情けない。
「突然押し掛けてすまない。
今日はAに謝罪をしたかったんだ。」
謝罪に謝罪が積み重なった。
…むしろ私が謝りたいのに。
みんなにこんなに迷惑を掛けてしまったこと。
みんなの期待を裏切ってしまっていること。
彼は私に何もしていない。謝罪なんてない。
でも今はひとまず彼の言葉を受け取るべきかもしれないと感じた。
「…謝罪？」
「あぁ、必殺技のことだ。
俺がAを追い詰めていたんだ。」
彼と交わした少ない対話の記憶を辿った。
食堂の時？
追い詰めていたという重苦しい言葉が胸に刺さる。
鬼道君は私にチャンスをくれていただけなのに。
私が、上手く出来ないから。
「…ごめんね。」
まるで鬼道くんの言葉を聞いていなかったと言うような発言をしてしまった。一番最悪なルートを選んでしまったかもしれない、彼の謝罪を無駄にした。
それでも、この言葉しか出てこなかった。
また雨が強まる。
無力な私はその水の力に勝つほどの大きな声を出さなければ、鬼道君にこの思いは伝えられないと思った。
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ビジュ(プロフ) - ほうじ茶さん» コメントありがとうございます！不定期更新となってしまいますが、ほうじ茶さんのご期待に応えるためにも少しずつ更新していけるように頑張りたいです(◍•ᴗ•◍) (2月29日 23時) (
レス) id: 529a911b17 (このIDを非表示/違反報告)
ほうじ茶 - めっちゃ面白いです！！続き待ってます！！ (2月29日 20時) (レス) id: 47dba8b665 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ビジュ | 作成日時：2024年1月15日 23時
