63 証を身に纏いたい ページ19
私の情けない姿に呆れたのか、下鶴君は逆方向へ進んだ。
フットボールフロンティアへ出場した人、エイリアの騒動で目にした人。
下鶴君は私を置いて、そんな仲間達の方へ進んだ。
私に残ったのは、
下鶴君から放たれた事実と。解けた包帯と。未だにエイリアを信用できない心と。怪我をした足と。まるで似合っていない青色の患者衣だった。
その後、どのくらいの時間が経ったか。いや、少ししか経っていないかもしれない、あの頃の監督が車で迎えに来てくれた。
病院に着くとすぐに何故か私ではなく監督が看護婦さんに呼び出されていた。
監督に先に行っててと言われ、たった1人で病室の廊下を歩いている時にどこからか聞こえた。
「あの代表の女の子は可哀想だから、優しくしてあげないと。」
無惨にも声は反響して私の耳へ伝わった。
周りの音は聞こうとせず、わざと大きな足音をたてて階段を上っていたのに。その言葉だけは鮮明に聞こえてしまった。
病室を開けると、お母さんが満面の笑みで座っていた椅子を倒し、私の所に駆け寄ってきてジャージを私に押し付けた。
私はさっきまで着たかったものが目の前にあるにも関わらず、お母さんを無視した。
手も洗わず、着替えず、少し泥で汚れているのに布団へと入った。
今信用できるのは布団の中でぬくぬくと育つ温もりだけ。
もう監督の言葉も、お母さんの言葉も、看護婦さんの言葉も耳に入らない。
ただただ頭の中で再生されている音は、下鶴君の発言と廊下の発言だ。
＿＿窓から外を見た。
突然の土砂降りで、外に子供達は見えない。
すぐに止むのだろうけど何故かこの豪雨だけはこれからも永久に続きそうに思える。
やっと今までの自分の行動がどれだけおかしかったか、枠から外れた行動だったのかに気づいた。
2人は部屋に居なかった。
お母さんは久遠監督と話に行くとか何とか言っていたが、もうそんなことどうでもいい。
本当に今日試合があったのか疑うほどに心の中は空っぽだった。私抜きでも十分楽しそうに、生き生きとしたみんなを久し振りに外で見た。
代表交代が、どんどん現実味を帯びてきている。
ジャージは丁寧に畳まれてパイプ椅子に置かれていて、すぐ下に昔のサッカーボールがあった。
とりあえず着替えようとジャージに手を伸ばすと、ゆっくりと足音が聞こえてきた。
コンコンコン
「A、入っても良いか。」
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ビジュ(プロフ) - ほうじ茶さん» コメントありがとうございます！不定期更新となってしまいますが、ほうじ茶さんのご期待に応えるためにも少しずつ更新していけるように頑張りたいです(◍•ᴗ•◍) (2月29日 23時) (
レス) id: 529a911b17 (このIDを非表示/違反報告)
ほうじ茶 - めっちゃ面白いです！！続き待ってます！！ (2月29日 20時) (レス) id: 47dba8b665 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ビジュ | 作成日時：2024年1月15日 23時
