62 黒には敵わない ページ18
「…ごめんね。」
中々答えが出ない私を見損なったのかすぐに返答が帰ってきた。声が低くなっても声色は優しい。
下鶴君の服装を見ると相手選手のユニフォームを着ている。
イナズマジャパンと…
体操座りで足に顔を埋めている私の隣に彼は立ちすくんで突然一方的に話し始めた。
「小学生の頃のこと覚えてる？
イナズマジャパンにAって人が居ると聞いた時は驚いたよ。」
記憶の中のチームメイトはやはり下鶴君だった。私の事を忘れていたと言っているように、皮肉めいた言葉が頭に響いた。
「…なんで話しかけたの。」
下鶴君の口調に反論するように躊躇わずに言葉を繋げた。何故だか少しずつ沸々と血が昂る。
今私はこんな体制で居るのだから、今の私の気持ちくらい察して言葉を選んでほしい。
「なんでそんなに喧嘩腰なの？同じチームメイトだったのに。
…それよりさ、その服どうしたの？」
「…足怪我しただけだよ。」
さっきの円堂君との会話を聞いていたはずなのに、彼は問いを私に投げかけた。
彼の行動全て全てが私を煽っていると思えてならない。
自分でもどうしてこんなに怒っているのか、どうしてこんなにイライラしているのかが分からない。
「怪我したって…決勝は近いんだぞ？
あー、だから試合にも出てなかったのか…」
何も言い返せなかった。
私に残ったことは彼が発した事実だけだった。
段々彼の口調が強くなる。その原因は間違いなく私の吐き捨てるような態度だった。
「君さ、代表から落ちてもいいの？」
「…ゎかってるよ、分かってるけど…」
私の震えた声を聞いて、下鶴君は深い溜め息をついてからこう言った。
選ばれなかった人の気持ちを考えたことがあるのかと。脳に何度も語り掛けて来た。
「…何も、変わってないんだな。」
頭を鈍器で殴られるように感じる。
数年ぶりに再開してからこんなにハッキリ現実を叩きつけられるとは夢にも出てこない展開だ。
自分でも心が傷付いているのが分かる、もう感情が追いつかない、弾けて壊れてしまう。
口を開いては必死に反論しようとした。
新必殺技を考えていること、監督と向き合おうとしていること、サッカーへの思いを感じ取ろうとしていること。
どれもどれもイナズマジャパンの選手、ネオジャパンの選手が出来て当たり前の事だった。
開いた口が乾いていくのを感じてゆっくり閉じた。
疑いの色はやはり真っ黒で白に塗り替えられなかった。
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ビジュ(プロフ) - ほうじ茶さん» コメントありがとうございます！不定期更新となってしまいますが、ほうじ茶さんのご期待に応えるためにも少しずつ更新していけるように頑張りたいです(◍•ᴗ•◍) (2月29日 23時) (
レス) id: 529a911b17 (このIDを非表示/違反報告)
ほうじ茶 - めっちゃ面白いです！！続き待ってます！！ (2月29日 20時) (レス) id: 47dba8b665 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ビジュ | 作成日時：2024年1月15日 23時
