61 幾千の下手くそな演技 ページ17
今度は風丸君に、先程と似たようなリアクションを取られた。
目を大きく見開き、少し左足を下げていた。
たった半日居ないだけで5年ぶりのような反応をする。…もしかしたらみんな余っ程心配してくれていたのかもしれない。
そう思えば思うほど心臓を握り潰されそうになる。
かなり大きな声を出された為、ベンチに居なかった人もAという言葉に異様に反応。
視線を集めすぎてしまい後退る。
怖い、みんなの目が怖い。
「A！もう大丈夫なのか！？」
「…ぅん。もう大丈夫。
思ったより動かせるんだ。」
円堂君の大きな声に更に相手選手の目線まで集めた。下手くそな愛想笑いを続けながら大袈裟に足を振る。それでもみんなの目は私の不格好な服装を疑っていた。
「…本当に、大丈夫なんだよ。」
「そうか、早く治って良かったよ！」
絞り出した声から信じてくれたのは多分、円堂君だけだ。
疑いの色を私に塗ってから塗り替えようとしない。
数日前に似たような光景を見たのに、どうしてもこの状況が辛くて。
じゃあ私は一旦病院に戻るね。と視線から足りない情報を告げてがむしゃらに来た道を戻った。
なぜだか、とにかく怖い。
なのにこの光景はどこか昔で何度も見てきたように思えた。
どうやって目を合わせていたのか。
どうやって会話していたのか。
どうやって一緒にプレーしていたのか。
どうやってみんなは私を受け入れてくれていたのか。
とにかく今はみんなと同じジャージを着たかった。
みんな私がこんな服装をしているからあんな視線を向けたんだ。…じゃなきゃ、あんな目向けないはず。
しかし監督の車はもう無かった。こんなに早く試合が終わると思わなかったのか。
校門の門に寄りかかって座り込んだ。
空は少しだけ灰を帯びてきて、青色が見えなくなってきた。
自分で戻ろうか。
でももしこれで悪化したら。
もう十分過度な運動はしてしまったのに。
円堂くんに大丈夫とあまりにも分かりやすい嘘をついてしまった。もしかしたら休養期間が伸びてしまうかもしれない。前だって倒れちゃったのに。
これ以上、みんなに迷惑を掛けたくないのに。
「こんな所で何を…？」
少し聞き慣れない声で話しかけられた為か心臓が跳ねた。
グレーの空から視線を逸らすと、視界に少し懐かしい髪色が入り込んできた。
昔とは打って変わって目つきが厳しくなっていて、眉と同じ向きに前髪が流れている。
「…御影専農の、ぇっと…」
「下鶴改だ。」
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ビジュ(プロフ) - ほうじ茶さん» コメントありがとうございます！不定期更新となってしまいますが、ほうじ茶さんのご期待に応えるためにも少しずつ更新していけるように頑張りたいです(◍•ᴗ•◍) (2月29日 23時) (
レス) id: 529a911b17 (このIDを非表示/違反報告)
ほうじ茶 - めっちゃ面白いです！！続き待ってます！！ (2月29日 20時) (レス) id: 47dba8b665 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ビジュ | 作成日時：2024年1月15日 23時
