58 模倣癖 ページ14
「か…監督、わたしっどうすれば…！」
何年も抱え続けてきた疑問が解かれた開放感と申し訳無さが襲う。どうしようもない。
私にサッカーを続ける資格はない。そう監督に伝えた。
泣きたいのは私ではなく監督のハズなのに視界が酷く歪む。
どうして、いつもこうなんだ。
そういうと監督は少し目を閉じてワザとらしく腕を組んで言った。
サッカーしませんか。と。
「いや…、え？」
病院の整備された庭に案内され、ボールを持たされた。
昔から使っていた懐かしいボール。
お母さんが家からわざわざ持ってきてくれていた。
茶色く汚れ、布が無惨にも剥がれている。
「看護師の方から許可を頂きました。
激しく動かなければ大丈夫だそうです。」
「い、今やるんですか？」
「そりゃあこんなに好条件が揃っていますから。
今日は暖かくてスポーツ日和ですね！」
態度は変わっていても内容はスパルタだ。
記憶を辿っていく内にクスッと笑ってしまう。
足を優しく振りかざして蹴った。
足の見た目はかなり重症だが、案外動かしても痛みがなかった。
今は患者衣が汚れそうなことだけが心配。
しかしボールは勢いがなく、変な方向に飛んでいってしまう。
少なくとも、日本代表が打ったボールとは到底考えられない。
監督は当時とは色褪せないボール捌きで返してくれる。まるで今現在も続けているかのよう。
その後も監督は対話をするように少しだけ強弱を付けたボールを返してくれた。
その裏側には間違いなく優しさがあった。
「いや〜Aさん、仮にも病人とは思えないですね。」
「…これ、激しい運動に入りませんか？」
近くのベンチに座りながらそう言ったが、一度焦ったような顔をしている。
「さぁ、どうでしょう。」
そう言って監督は少し息を切らしながらゲラゲラと笑った。
…こ、これ悪化しないのかな。
「Aさん。」
空気が入れ替わったように周りが落ち着きを取り戻した。
そよ風が私の頬を優しく撫でている。
「サッカー、好きですか？」
幼児でも答えられるような簡潔な質問にもちろん。
そう言おうとした。
本当に？
私の包帯で塞がれた足がそう答えた気がする。
本当に、サッカーが好きなの？
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ビジュ(プロフ) - ほうじ茶さん» コメントありがとうございます！不定期更新となってしまいますが、ほうじ茶さんのご期待に応えるためにも少しずつ更新していけるように頑張りたいです(◍•ᴗ•◍) (2月29日 23時) (
レス) id: 529a911b17 (このIDを非表示/違反報告)
ほうじ茶 - めっちゃ面白いです！！続き待ってます！！ (2月29日 20時) (レス) id: 47dba8b665 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ビジュ | 作成日時：2024年1月15日 23時
