55 一週間の無碍 ページ11
監督は先生に会釈をしてから私の方を向く。
秋ちゃんはこの空気に耐えきれないのか廊下からこちらを覗いていた。
近くにあった椅子に座り、足を組む。
「なぜ、誰からも許可を貰わずに無茶な特訓をしたんだ。」
監督は投げ掛ける様に丁寧に言葉を選んでいる。
やはりその裏側には怒りを堪えている声も孕んでいることくらい分かった。
「…あそこなら自然も相手にできる、から良いと思いました。」
しどろもどろで繋ぎ繋ぎの言葉を紡ぐのが精一杯だった。頭が真っ白で、何も考えられない。
「もし、誰もお前のことを見つけていなかったら。
どれだけ大変なことになっていたか分からなかったのか。」
「すみません…」
「円堂達がどれほど心配していたか知っているか。」
「…し、知りません。」
私の曖昧な言葉に呆れたのか、すぐに立ち上がる。
私を認めないと言っているような行動一つ一つに心が刺される。
「だが、選手の管理が行き届かなかった私の責任だ。まずは体を休めてくれ。」
「…はい。」
監督の落ち着いた言葉に油断してひとまず相槌を取ってしまった。
＿違う、わたしは、否定しないと。
口を開いた瞬間、監督は病室には居なかった。
「Aちゃん…お大事に、ね。」
秋ちゃんは私の様子を伺ってすぐに話を済ませてくれた。私はマネージャーにまで気を遣わせてしまうのか。
正直、もう駄目だと思った。
みんなは今練習しているのかな。
当たり前だ、まだこんなに明るいのだから。
日本代表には選手の交代が認められている。
私は落とされ、別の女子か雷門中の人が補充されるのだろう。だって、そっちの方が、日本のためだ。
せめてもっと力があれば、もっと実力があれば。
こんな馬鹿な怪我しても残してもらえたのだろうに。
ベッドのシーツを強く握った。
シワが残ってしまった。
シーツが少しずつ濡れていく。
涙がボロボロと下に落ちる。
ここで、私のサッカーはおしまいだと悟った。
もういっそサッカーのことは忘れてしまおうか。
認められぬまま、別の道に進もうか。
散歩しようとしても大袈裟に強く固定されていて足が少ししか上がらない。今までなら動けたのに。
くだらない練習が、サッカーの道を閉ざした。
あの一瞬が時間を無碍に扱った。
本当に、馬鹿だ。
「A開けるわよ。」
部屋よりも重たいノックが鳴り、懐かしい声が聞こえた。
「…おかあ、さん」
「私だけじゃないのよ。」
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ビジュ(プロフ) - ほうじ茶さん» コメントありがとうございます！不定期更新となってしまいますが、ほうじ茶さんのご期待に応えるためにも少しずつ更新していけるように頑張りたいです(◍•ᴗ•◍) (2月29日 23時) (
レス) id: 529a911b17 (このIDを非表示/違反報告)
ほうじ茶 - めっちゃ面白いです！！続き待ってます！！ (2月29日 20時) (レス) id: 47dba8b665 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ビジュ | 作成日時：2024年1月15日 23時
