46 独りの鷹 ページ2
「Aさん、パス練しませんか？」
「良いけど…飛鷹君は？」
特徴的な髪型で一目で判断可能、飛鷹君。
彼は初心者のようなプレーをする。なぜ代表に選ばれたのか、少なくとも選考試合では優れた選手が居た。
「…あ、そういえば立向居君ってキーパー以外もできるんだね。」
「はい、ミッドフィルダーだったんですよね。」
「へぇー、なんでキーパーに？」
「円堂さんに憧れて…、お恥ずか＿」
「全員集合！」
監督の呼びかけ。
オーストラリア戦の時はあんなに監督を不審に思っていたのに、監督が口を開けばみんな真剣な顔をして頭に内容を入れている。
話を聞くに、練習終了との事だった。
不満を持っている人、颯爽と宿舎に戻る人。私は前者だった。
＿
前回の試合をビデオで見直す。
虎丸君のキレのある動きにはやはり目が行く。
時々私が映るのが気恥ずかしい、これが日本のテレビで流れてるのかと思えば、今からでもテレビ放送を辞めてほしい限りだ。
Aさん映ってるっスよ。と壁山君に話し掛けられ、周りの視線を集めた。そんな事言わなくて良い、そう壁山君に釘を差した。
ただあの時の動き。妙に引っ掛かる。
ビデオでもやはり私の動きで相手不自然に吹っ飛んでいる。これは＿
＿
「飛鷹！今日は俺とパス練習しよう！」
練習時間。円堂君の声にみんなが同じ方向を向く。
円堂君は飛鷹君と親睦を深めたいようだ。
なによりみんなも飛鷹君の実力を疑っているようだった。
でもこの雰囲気じゃやりにくいだろうなだとか、私じゃなくて良かっただとか、そんな失礼極まりない言葉を頭に並べる。
案の定真っ直ぐ飛ばすことができず、飛鷹君はこの空気をさらに沈めるように何処かへ歩みを進めた。
実力が違いすぎる空間に入れられた飛鷹君。
私が全く関係のないバレーなどをやるような物だ、確かにやりにくいだろう。
彼の名は一度も聞いたことがない。
なら、私と同じ様に誰かが推薦したのかもしれない。しかし推薦と飛鷹君がどうしても=で成り立たず、肩を落とした。
その日を境に、何故か円堂君は飛鷹君と積極的に小さな事でも会話を挟むようになり、飛鷹君も柔らかい表情をするようになった。
それ以上に、チーム全体の雰囲気が良くなっている、これで決勝も臨める。
練習が終わって部屋に戻る途中、基山君に話しかけられた。
「Aさん、前の話なんだけど…」
「うん、分かってる。」
ポケットの中の携帯が震える。
基山君に聞こえないよう、手でポケットを覆った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 72人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ビジュ(プロフ) - ほうじ茶さん» コメントありがとうございます！不定期更新となってしまいますが、ほうじ茶さんのご期待に応えるためにも少しずつ更新していけるように頑張りたいです(◍•ᴗ•◍) (2月29日 23時) (
レス) id: 529a911b17 (このIDを非表示/違反報告)
ほうじ茶 - めっちゃ面白いです！！続き待ってます！！ (2月29日 20時) (レス) id: 47dba8b665 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ビジュ | 作成日時：2024年1月15日 23時
