永劫回帰【イナイレ】 (ページ9)

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王将獲得の経路【井吹宗正】ページ9

退屈で眠りの呪文のような授業が終わって放課後になった。
私は先生に目をつけられないくらいのスピードで廊下を駆けた。

体育館に入って観客用の席へ行くと、まだ誰も来ていなかった。
小さくガッツポーズをすると、バスケのゴールが揺れる音がして前を向いた。

彼が1年生の井吹君。
今年凄いカッコいい後輩が入ってきたと2年でも話題になっていた。
サッカー部は全国を狙える我が校でも、県大会などの出場が多いため、バスケ部はかなり優遇されていた。

噂によれば井吹君の部活体験は凄まじかったらしい。
恵まれた身長、トレーニングの跡が見える筋肉。
オマケにルックスも良い。
となれば全校生徒が彼に釘付けになるのも時間の問題だった。

部活に所属していない私はかなり時間があるため今日初めてバスケ部の練習を見に来た。

が、かなり早かったのかバスケ部の部員はまだ揃わず、ギャラリーで一杯らしい観客席も閑散としていた。

彼の姿を見ているが、洗練された動きに目が話せなかった。
特に身長を生かしたダンクシュートは惚れ惚れする。

「おい、」
「…え、あ私？」
突然低音で話しかけられた。
恐らく一人の女に見つめられるのは気が散るのだろう。

「ボール取りに行ってくれるか。」
どうやら私が開けっ放しのドアからボールが出ていってしまったらしい。
動きたくないなぁと思う反面、私が原因なのだからと意識を切り替えることができた。

というか外は駐車場だ。
もしボールが自動車に当たったら、と思うとすぐに足が動いた。

「分かった！」

あった。
ボールは茂みにポツンと置いてあって、土がボールを支えていた。
緑色に悪目立ちしているボールはすぐに見つかった。

体育館に戻るともう話し声が聞こえた。
大勢で入ってきたようで、ギャラリーと言っても殆どが女子だった。
そして目線は井吹君の方。まるで他の部員が見えていないようだ。

「井吹君、パス。」
「おう、サンキュ。」
彼に下手なチェストパスをして始めての会話をした。
先輩に対して敬語を使わないことに少し笑ってしまった。

観客達は悲鳴を上げていて、バスケ部員達の顔は緩んでいた。

はっきり注目されるのは苦手だ。
でも何だか今日だけはどこか優越感があった。
夢中になりすぎて。
階段を登りながらもう一段あると錯覚してしまった。

少しだけ、歩兵を進めることができた。