永劫回帰【イナイレ】 (ページ8)

今日:12 hit、昨日:5 hit、合計:2,747 hit

子供に戻れない2 ページ8

お酒が回ってボーっとしていると、話もいつしか結婚の話題になり、最高の盛り上がりを見せた。

「俺彼女いねーんだけど、誰か可愛い子の連絡先持ってる子！」
「誰がお前にやるか！俺もねーけどな！」
「にしても良いよな〜基山は手数多いんだから、
いや今は吉良様か？」

基山、というワードに酔いが冷めかけた。
吉良財閥という日本でもトップクラスの財閥。
基山君は私と同じ年齢にも関わらず社長となり勤めているらしい。
殆ど同じ時間を生きているはずなのに、どうしてこんなに差が生まれるんだろう。

チラッと気付かれぬように彼の方を見る。
当時から目を引くカッコよさだったのに…
つい目を背けてまたお酒を流し込む。
きっと美人な彼女さんが、。

「ううん、そんな事無いし彼女も今居ないよ。」

バチッと目があった。
私は何事も無かったかのように辺りを見回した。
その一言にクラスメイトみんなが喜怒哀楽を表した。

彼女が居ないと喜ぶ人。
嘘つけ連絡先くれと怒る人。
基山君の結婚式にまだ行けないと哀しむ人。
その光景を見て笑ってる人。
哀しむ人はあんまり居なかったけど。

やった、居ないんだ。
私は小さくガッツポーズをして焼き鳥の皮を貰った。

短針は22時を指す。
また酔いが回ってきた、帰らないと。
「よし、次。2次会行くぞ！」
「カラオケ、行く人ー！」

い、行けるはずない、きっとみんなも…と思ったが、まだこの懐かしさに包まれたいのか殆どみんなが手を挙げていた。

行きたくない、でも空気を読まないと…
勢いに任せて挙げようとすると、その手は誰かに覆われた。

「Aさん。」
「…、ぇ、基山君！？」
「ちょっと別の所でまた飲みたいんだけどさ、Aさんどうかな。」

いつの間にかすぐ近くに来ていた基山君。
柔軟剤の自然な香りが頭をクラクラさせた。
みんなの前で堂々とした告白。
ムードメーカー達が雄叫びを上げる。

そんな事を言われたらYES以外の言葉は頭に浮かばなかった。
大人になってしまった私はお酒の力がないと素直になれない、駄目だ。

基山君の左手をヒッソリと掴んだ。
彼の鼻の高い横顔にウットリする。

体の内部はとにかく熱い。
外の空気はひんやりとしていて、気持ち良かった。