永劫回帰【イナイレ】 (ページ17)

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認めたくなくて【神童拓人】ページ17

「神童君、彼女居るらしいよ！」
今日クラスメイトに言われた事が頭から抜けず、放心状態で1日を終えそうだ。
唐突に飛び出した言葉に、私の頭は鈍器で殴られた。
当然クラス中の女子が騒ぎ立てたのは言うまでもなかった。
その時は頭が真っ白で、嘘かもしれないとすら考えなかった。
＿そんな事、聞いたことも無かったのに。

確かに神童君は当に魅力の塊だ。本当に私と同じ年に生まれたのか疑うレベルに。
でも彼女なんて作るような人には見えない。
何故か、神童君と彼女は結びつける事が出来なかった。
いや、神童君の事を考えすぎだ、好きでもなんでもないのに。

机を直視しながら考えた結論を胸に、教室を出た。
長居しすぎたせいか閑散としていて、今日は部活が無い日だからか掛け声も、音色も聞こえてこなかった。

もうすぐで校門だ。
いつも以上に速歩きをし、複雑な思いを風で吹き飛ばそうとした。

「＿あ、Aさん！」
少し張った声が耳に入る。
彼は走って来てくれた。
私は勢いよく振り向いて止まったからか、首元に彼のウェーブの髪が触れた。
その余りの近さに互いが驚き、どちらも右足から後ろに下がった。

「ご、ごめん…」
「いや、俺も…＿あ、ハンカチ落ちてたんだ。
前にAさんが居たからもしかしたらと思って…」
そう言って彼はハンカチを手の上に乗せて差し出してきた。
女児が使うようなピンク色の小さなハンカチ。
極めつけは右下に猫のワンポイントの刺繍が入っていた事だった。
顔を真っ赤にして私のと伝えた。

「そうか、良かった。」
彼は私の隣を瞬間的に通ったと思えば、そのまま私をあっさり越えた。
そこで私は用済み。彼女とでも帰るのかなと悶々と汚れた思考だけが残る。
視線を下に落とす事しか出来なかった。

「＿あ、俺猫好きなんだ。
Aさんは猫飼ってるの？」
「ぇ、う、うん。」
唐突な問いにバッと顔を上げれば、神童君は血色の良い顔でニッコリ弧を描いた。

「じゃあ今度、どんな猫飼ってるか教えてくれないか。」
その言葉に大きく相槌をとる以外の攻略法を、私は知らない。

その後帰路に着いた彼をボーっと見つめた。
認めたくは無いが、神童君の彼女が居るのか気になるのも、神童君の言葉に心臓が内側から叩きつけるのも何故かは何となく察してしまって。
でもどうしても認めたくなくて。

家に着いても緩んだ頬は中々治ることを覚えなかった。
子供らしい猫のハンカチだけは、相変わらず平常心だった。