永劫回帰【イナイレ】 (ページ15)

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変わらないで【立向居勇気】ページ15

昨日の足元に真っ黒でバサバサと切られた髪の毛が記憶の中に広がる、2年分だ。
切る前は髪の毛が結べないから邪魔だとか、お金をかけたくないなど嘆いていたが、終わってしまえば酷く爽快感に包まれた。

地元の小さな床屋で胸元位まであったロングは、首元までの髪の量が少ないショートボブに落ち着いた。

重々しく乾かすために早起きした時間は、今グッスリと眠りに当てられる。
そう考えたにも関わらず、みんなから好印象を得たくていつも通りの時間に起きてしまう。

サッサと制服に腕を通し、ガタガタと食器の音を奏でながら朝ご飯を食べ、颯爽と家を出た。
早朝だからか太陽はまだ熱を福岡に照らさず、弱い冷風がソロソロと体中を攻撃した。

徒歩10分、陽花戸中。
今まで部活の戦績はパッとしなかったが、去年の中学校破壊事件と世界一になった幼馴染が出たお陰で、勇気はキャプテンにまで這い上がった。
そして、全国大会優勝候補と言われるまでに成長した。

そのサッカー部は学校全体が応援しており、当然のように朝練を淡々とこなす。
立ち止まって校庭を見る内に、足音が増えるのを肌身で感じた。

去年はあんなに幼くて、小さくて。
本当に小学校を一緒に卒業したのか不安になる次元に居た。
現に合宿所から帰って来た時は学年全体が立向居君お帰りパーティーという勇気が困るような行事を実施した物だ。
それでも勇気は真っ赤に赤面をしつつも血色の良い顔で大きく口を開き、歯を見せて笑っていた。

なのに今はどうか。
ゴールからフィールド全体を見守る視線は凛々しい物で、サッカーへの真剣味を物語っていた。

変わっていく幼馴染を見るのは嬉しいはずなのに、どうも私だけ上手く応援できず、目を背けてしまう。
ずっとあのままで居てほしかった、そう思ってしまう私は本当にこの生徒として失格だ。

「変わらないで。」
勝手に口からボロっと溢れた言葉は、幸い誰にも聞かれていなかった。
誰にも気づかれぬように、悟られないように、しまっていくために。
軽すぎる頭上とカバンを抱えては校門を越えた。