永劫回帰【イナイレ】 (ページ13)

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言い分【霧野蘭丸】ページ13

「その髪、ほどいてもいい？」

放課後、カーテンを束ねながら学級日誌をカリカリと書き進める霧野に対してそう言った。

霧野。今年度初めて同じクラスになったけど、まさかここまで見た目と性格が正反対だなんて思っても見なかった。
彼の噂は昔から聞いていた。去年は殆ど見たことは無かったけど。

彼に対しての第一声は女子みたい。
流石に失言だと思った、失礼なことをしたと。
案の定、その言葉は彼を少しだけ苛つかせた。
多分私への第一印象は最悪だったと思う。

だけど時を共有する内に彼を知った。
彼は意外と男らしい性格。
部活、勉強、人間関係、様々なことに本気。
そんな彼のギャップに惹かれた。
そりゃあんな噂も立つよ。

そして班活動で関わっていく内に彼も段々私に打ち解けてくれた。
多分ギリギリ友達のラインくらいには立ってると思う。

でも私にだって言い分がある。
女子に見られたくないなら、その髪型を辞めれば良い。
そんな名案を思い付いた。

「お願い、一回だけ、片方だけ。」
「いや、なんで…」
「お願い！」

手をぐっと合わせて懇願する。
霧野は少し眉間にシワを寄せてから考え込み、一回だけだぞと言って私と逆方向を向いた。

＿＿あれ？凄い綺麗。思わず何度もパチパチと瞬きをする。
霧野が自分で結んでいるのだと思うが、本当に結び目が綺麗。
分け目でしっかり2等分にされており、簡単に解けぬようにとグッと結ばれていた。

「は、速くしてくれ。」

「ぁごめん。じゃ、じゃあ行くよ。」

ついマジマジと見すぎた。
彼の承諾の相槌を聞いてから、右の髪ゴムから優しく引っ張ってスルッと解いた。
思ったよりもあっさり。
解いた髪を撫でれば毎日長い時間を掛けて手入れしているであろう艶が強調されていた。

心がむず痒い気がして左の髪ゴムは取るのを辞めた。右を取っただけでもだいぶ印象は変わると思う。

「じゃ…こっち、見て。」
霧野がこちらを見た時に髪の毛が少しずつ学ランの肩から流れ落ちる。
すぐに重力に従ってダランとぶら下がる。

「か、返してくれ、それ。」
つい見入って彼の髪を触りながら指で髪ゴムを引っ張ってしまう。
カーテンを束ねたからか余計外から光が差し込む。その演出家のせいで、余計私の好奇心は掻き立てられた。
霧野の髪に興味があるのか、霧野自身に興味があるのか。

「もう片方も。」

この件について、私にだって言い分はある。