残念至極十年前の君へ【イナイレ】 (ページ9)

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でもこのメンバー…恐らく男子しか参加できないはず。
女子が居ない、どうして私はその一部に加えられているんだ。

…いや、マネージャーとか選手じゃないのかもしれない。
とにかく本人に聞いてみるに越したことはない。
響木さんの所に、行かないと。
外靴を探す。
私のシューズはひと回り小さく、幼稚園児のように踵に名前が刻まれているからすぐに見つける事が出来た。
蹴飛ばされたのか右靴が見当たらない。
やっとの事で手に取れば、一番乗りで体育館を出た。

「雷々軒、雷々軒…」
一人でブツブツと呟く。
目的地をキョロキョロと探しながら少しだけ観光をする。人の多さが尋常じゃない。私の住んでいたところは世間が言う、田舎だった。
たまたま売っていたソフトクリームの誘惑に負けて買い、道草を食ってしまった。
ペロペロと舐めていると、大きな背中と特徴的な服装を見つけた。大きな口にそれを詰め込んで、しっかり飲み込んでから声を掛けた。

「…あの！」
「なんだ、Aか。」
高い身長から繰り出される視線が突き刺さる。威圧感のある見た目だが、聞いてみるしか無い。
上手く聞けなかった私が悪いのだから。

「えっと、どうして私が日本代表候補なんですか？わ、私は女子で…」
「なんだ、話を聞いていなかったのか。」
サングラス越しで見えない瞳を必死に探す。
ただ目が合わない恐怖に視線を下に逸らした。

「…FFIは女子が一人のみ参加可能なのだ。
そこで俺はお前を推薦した、それだけのことだ。」

ため息交じりにそう教えられ、私はまたやってしまったと感じる。と同時に、それだけのことという独特なワードに手を握りしめた。

「ご、ごめんなさい。
でもなぜ私なのでしょうか。
確か、雷門中には一時期女子がいましたよね…？」

「俺がお前が良いと判断したからだ。」
「、それだけのことって…！」

「それだけ」という言葉には収まらない大きさだった、まるで心の中を覗かれた気分だった。
心臓がドクドク鳴り始める。
なぜ、私なのか。
ボールを蹴ることを一度は諦めた。
気がつけばボールはホコリを被っていた。
だって、私は日本代表になるのかもしれない、日本を背負うのかもしれない。それだけでは収まらない。

「試合は円堂がキャプテンのチームだ。
頑張れよ。」

そう言い残し、響木さんは目的地へと歩きだして沈んだ私を置いていった。
その言葉に何も私は言い返せなかった。
視界が歪む、涙が出てきた。
情けない、これだけだった。