残念至極十年前の君へ【イナイレ】 (ページ44)

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42　デザートライオン戦2 ページ44

後半が始まった。
相手はフォワードを増やして後半に掛けるつもりだ。
…？なんだかみんなの様子が変だ。
動きがやけに鈍い。
前半の方が間違いなくキレがあった。
早くも点を取られそうだったがなんとか凌ぎ＿

「緑川！」
…！緑川君が倒れた。彼の滝のように流れる汗を見て察し、太陽を直視する。
そうだ、暑さだ、今日は暑すぎる。

＿最近焦ってるように…
基山君の言う通り、練習のし過ぎ、オーバーワークだ。折角の本番に響いてしまったのか。

「選手交代、A！」
「…ぁはい！」
少し遅れて返事をする。呼ばれた、やっと出れる。
やったと歓喜の声を小さく漏らすと、隣の不動君が舌打ちして不満そうにベンチに座った。

緑川君と変わってフィールドに。
「Aさん、ごめん。」
「大丈夫。ゆっくり休んで。」

「「さぁ久遠監督、唯一の女子選手、Aを投入します！」」
実況の良い迷惑な言葉の並びで更に歓声が響く。足が震えて変な鳥肌が立つ。選考試合を思い出す。
みんなはこんな所でプレーしてるのか。上手く…できるかな。そんな言葉は胸の内にしまった。
とにかく…今は守りに徹しよう。
こちらの方がリードしてるから。

「Aさん、よろしくッス。」
「あ、うん。ありがとう壁山君。」
周りのみんなを見ると汗が滲んでいる。
キーパーの円堂君はそこまで疲れていないようだが。ここは私が…！

ホイッスルが鳴った。
ボールのあるところまで駆け抜け、カットした。
よし、とりあえずドリブルで…
誰にパスを出せそうか…
キョロキョロしてもみんな既にグッタリしていた。

「狩りの時間だ！」
…狩り…？
「ぁっ」
とられた、マズい。ディフェンスラインが上がりすぎてる。急いで、戻ら＿＿

「「ゴール！怒涛の攻撃で1点を返した！」」
ゴールネットには円堂君と綱海先輩とボールがあった。振り返るのが遅かった、気づくのが遅かった。振り返った時にはゴールネットが揺れていた。
…なんで、
なんで私はこんな前に居るんだ。
なんで私は息を切らしたみんなをこちらから見てるんだ。
なんで…私は相手に点数を与えてしまった。

「綱海、おい綱海！」
わたしの、せいだ。

「ここからが俺達のサッカーだ。」
前半点数を犠牲にしてまで走らせていたのは体力を無くすため？

「あとは息の根が止まるのを待つだけだ。」
この灼熱の暑さの中、私達は相手の言葉に返す事が出来ず、ただ相手の捻くれた言葉に荒い呼吸で返すことしか出来なかった。