残念至極十年前の君へ【イナイレ】 (ページ39)

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37　サッカーしてる姿ページ39

「お母さん。」
「Aどう？監督と会う？」
ギュッと携帯電話を握る手が強まる。
必死に頭を回し、最適解を見つけ出そうとした。

「…ううん。今はいいよ。
時間ができたらまた連絡する。」
「そう。練習頑張ってね。
お母さん、Aがサッカーやってるところ見るの大好きよ。」
「…うん、ありがとう。」

今はこれでいいんだ、大丈夫。
そう自分に言い聞かせ、ポケットに邪魔な物を突っ込んだ。
今日は30分も遅く起きてしまった。早く、練習に行かないと。

＿
「風丸君、こっち！」
「Aさん！」
よし、みんなマークしてる…このまま持ち込めば。
…いや、栗松くんが対応しきれていない！

「吹雪君！」
よし、パスが通った。
監督の意図に反するかもしれないが、
技がちゃんと思い出せるようになる、まで…確実にパスを繋いで行かないと。

「全員集合！」
…監督だ。
前回の試合以降、監督のサッカーへの熱さを知り、みんなは素直に指示に従うようになった。それは私も例外ではなく。

「次回の対戦相手が決まった。
カタール代表、デザートライオン。」
「このチームは疲れ知らずの体力と、当たり負けしない足腰の強さが特徴です。」

体力に足腰…
苦手な事ばかりだと心臓が嘆く。
次の対戦相手の為に何をすれば良いのか。
そこから話は始まる。
「どんな練習をすれば良いんだろう。」
「そんなもん、走って走って走り込むしかねぇだろ！」
確かに、一理ある。
ただ走り込みという言葉に目を逸らす。
嫌だな、その言葉を簡単に発せる程の空気ではない。

「あ、じゃあ俺これで失礼します。」

虎丸君。まだ日が出てるのに＿
彼は凄まじいテクニックを持っている。
残って練習したらもっと…思わず首を傾げる。
私と同じように虎丸君への疑問が挙がった。
空気がズンズン沈んでいくのが全身に伝わる。

「分かりました！
キャプテン、私達虎丸君のこと調べてみます。」
流石行動力の塊、春奈ちゃん。
だんだんみんなの顔も晴れに傾く。
みんな虎丸君のことに気を取られていたから有り難い。

灼熱の太陽が私を無情に照らす。
後ろから虚ろな目でみんなの背中を見る。
「よーし、今日の特訓はここまで！」
円堂君の掛け声とほぼ同時、少し早かったか。地面に倒れ込んだ。あ、暑い…何km走った？
ここのグラウンドってどのくらいあるっけ。
一周何ｍだっけ。
息を吸うことに必死で、当たり前のことすら思い出せなくなってしまった。周りを見ると、みんなもかなりグッタリしていた。