残念至極十年前の君へ【イナイレ】 (ページ38)

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36　ビッグウェイブス戦4 ページ38

饒舌になった響木さんの言葉に耳を傾けた。
チームに必要という言葉を強調するように、大きな声を発した。
10年間、監督は何かしらの媒体でサッカーを愛していた？
昔も今も、愛していた？

…試合に意識を戻す。
綱海先輩はマークをしつこく付けられており、上手く動けない状況＿
壁山君がボールを持つ。
得点源は動けず、イナズマジャパン全体を封じようとしている。
…この状況どこかで。

「1人で持ち込め！」

監督の言葉にあぁと驚嘆の声を漏らす。時にはディフェンダーも攻めることは大事という事を伝えたかったのかもしれない。
体格を活かし、壁山君は1人で乗り切った。こんな大舞台で…
最後の希望に豪炎寺君にボールが渡った。
チラッと時計を見る。
もう…時間が…！
このままじゃ延長に入る。
ただこちらは多くの選手の息が上がっている。

…？爆熱ストームじゃない！
目を擦っても魔神は現れない。
じゃあファイアトルネード？…いや、向きが違う！
素早く放たれた技は相手の鉄壁も破かれ、
実況の興奮した声が聞こえた。

ラインを越えた。
ホイッスルが鳴った。

反射的に得点板を見つめる。2-1
ベンチのみんなと喜びを分かち合った。
出番とか必殺技とかなんて事はもうすっかり頭に抜けていた。

「おーい、A！」
「あ、円堂君！正義の鉄拳。凄かった！」
「あぁ、Aのお陰だ！
一緒に特訓手伝ってくれて！」
私のおかげ、その言葉に首を傾げる。
大した事も円堂君にはしてあげられていない。

「特訓？一昨日の？
…でも私が一方的に＿」
「いーや！何かA感覚みたいな感じでやってたよな、それが試合で役に立ったんだよ！
ありがとな！」
何を言っているのかがまるで理解出来ず、より首を傾げた。
私はキーパーでもないのに、円堂君の練習時間を奪ってしまった。どうして、私に感謝してるんだろう。

「そっか…どう、いたしまして。」
「あ、鬼道！じゃあありがとなー！」
つくづく嵐のような人だ。
満面の笑みを浮かべて親友の所に駆け寄った。
今になって名前で呼んでくれていた事に気が付いた。
進化した正義の鉄拳、綱海先輩と豪炎寺君の必殺技…。やっぱり必殺技は魅力的だ。

バスに揺られながらバーっと送られてきたメールを見た。
テレビに映ってたよだとかAのこと実況で紹介されてたよだとか。

＿たった1つの連絡が、私を凍り付かせた。

試合お疲れ様。
小学生の時の監督があなたに会いたいって。