残念至極十年前の君へ【イナイレ】 (ページ34)

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32　アジア予選開幕ページ34

「「いよいよこの日がやって参りました、第一回フットボールフロンティアインターナショナルアジア地区予選、スタジアムは超満員。
すべてこのスタジアムで行われ＿」」

人の多さにブルブルと肩を震わせる。
大前提で私達中学生だ、定期的にプロの試合を見に行くが、ここまで人は見ない。
情なくキョロキョロと辺りを見回すも、みんな澄ました顔をしている。
これがテレビ放送されていると思えばより震えが止まらなくなる。
やはり大会経験があるみんなはこの景色に慣れているのか、私は緊張と貧血で倒れそうなのに。

この空気に押し潰されそうだ。
試合に出る以前の問題だ…
ただお母さんはこの試合を見に来ると強く宣言していた。なら私は堂々と胸を張ってこの開会式を終えなければならない。

「「財前総理による開会宣言です。」」
…財前総理。
バッと塔子さんの顔が脳裏に浮かぶ。
日本のトップを始めて目にして固唾を呑んだ。
雷門のメンバーは少し顔が明るくなる。
そうか、日本のスタジアムだから宣言も総理大臣がやるのか。

「少年、少女たちの祭典＿
素晴らしいプレーを期待します。」
財前総理のスピーチに感動して強く拍手を奏でる。
女子推薦をもしっかり加え、サッカーの楽しさは男女共有と伝えてくれた。

私に託してくれた人が沢山いる。

お母さん
松野君
リカさん
財前さん
…監督

みんな私に期待してる。
唯一の女子として素晴らしいプレーをすることを。
期待に、応えないと。
立向居君の隣に整列する。彼はラストを飾る20番。
背番号19番、選考試合とは別の番号だ。

今回の対戦相手が来た。
黄色のユニフォームは何処となく雷門中を彷彿とさせた。
何より広い肩幅に太い腕。
強大な体が目に入る。
握手を交わすと、挑発しているのか、かなり強く手を握られ、反射的に目を細めた。
日本を舐めているのか、女子である私を舐めているのか。或いは両方か。

「スターティングイレブンを発表する。」
体が沸々と暑くなって熱を帯びだす。
ドクドク心臓がうるさい。

でも今まで大した情報を得られなかったから相手の動きを見ておきたい。
でもそしたら最後まで出られないか＿＿

「ミッドフィルダー鬼道、風丸、緑川」
…まだ、交代があるかも、そんな淡い期待を胸に、フィールド全体に鳴り響く試合開始の合図が放たれた。