残念至極十年前の君へ【イナイレ】 (ページ31)

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29　サッカー馬鹿の特訓ページ31

腹から少しだけ大きな声を出すと、すぐにドアが開いた。すると音の原因はやはり彼だったようで、やっと音が冷めた。

「おうA！ヘヘッ特訓！」
「特訓？…部屋の中で？」
「あぁ！ちょっと来いよ！」

強引に部屋に入れられれば、ボールの跡が至る所に付いていた。
…ここのお金って誰が出すんだろう。
私達に請求されないかと無性に心配になっていると、円堂君に現実に引き戻された。

「A！これをこう縛るん…
ん？あ、あれ？、ごめん！結んでくれ！」
「あぁ…うん。」
「ありがとう！」

結び目が上手く結べず机に体をぶつけそうな円堂君を少し支えてから、目隠しの布を縛った。
些細なことにも歯を見せて笑ってくれる円堂君に、ついこちらも笑みが溢れる。

よし、そう彼は言うと、ボールを壁に向かって蹴った。
当たると良くないと後ろの方へ下がった。
するとボールは反射し始め、あらゆる方向に跳ね返り始める。
あ、危ない!

「ココだっ！」
確かにボールは当たったが、円堂君の顔に直撃。
声を掛ければ大丈夫と返してくれた。

何の特訓なのと問うと彼は特訓！とボールを見つめながら返した。
…これが噂のサッカー馬鹿なのかと彼にとって最高の褒め言葉を頭に浮かべた。

「とにかく＿俺達は部屋の中でできることをやってんだ！」
「外じゃなくてもできることってあるんだね。」
「もちろんさ！あ、Aもこれやるか？
…ってキーパー専用か！」

少し間を置いて考えた。
確かに、感覚でボールを追うのは私のポジションにはまるで合わない。でも＿
…雷門のキャプテンが言うならやってみても、いいのでは？そう脳裏に浮かんだ。

「…やってみるよ。」
そう言うと彼はありがとうと言って目隠しをバッと渡した。

「よし…！じゃあまず俺がボール蹴るから…」
「ううん、円堂君。私が蹴るよ。」
「…あぁ！その意気だ！
頑張れよ！はい、ボール。」

少しキョトンとした表情をしてからまた血色の良い顔に戻り、ボールが手渡された。

きっといつもならまず円堂君蹴ってみてだとかそんな小さな事を伝えている。
でもどこからか自信が湧いてきた。

きっとできるよ、何処かで誰かが私の背中を押す。
この感じ。
始めて技を出せたあの時と、似ていた。
結び目をギュッと強く結べば、真っ暗な視界が広がった。