残念至極十年前の君へ【イナイレ】 (ページ29)

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27　会いたい人ページ29

先程よりも小さな音がまたドアから聞こえる。
…室内に居るだけ人の出入りが激しい。
先程の安心感を持ちながら視界を開けるとチャームポイントの眼鏡が見えた。

「あ、あの…Aさんに会いたいって人が居るんですが…」
「春奈ちゃん。会いたい人って？」

あまり接点が無かったからか声を少し震わせる彼女を安心させるかのように弧を描く。
そうすれば彼女は目を開いて満面の笑みを見せ、良いから良いからと私の腕を引っ張った。
段々食堂に近づくにつれ、東京では聞き慣れない方言が聞こえてきた。

「あんたが女子選手か！
ゔーん、あんた、本当にサッカーできるんか？」
「Aだよな！円堂から聞いてるよ！」

会いたかったと言わんばかりの笑みを向けられ、2人の顔がグイッと私の目を見た。
…何処かで…

「…ぁ！エイリア学園と戦ってたりしてますか？」
「してます？じゃなくてしてましたや！
あんたオモロイんやな〜
リカって呼んでな！タメでええで！」
「元は雷門に居たんだよ。
私は財前塔子！今はイナズマジャパンの応援みたいなもんだよ！」

リカさんは私のおかしい言葉を正すようにゲラゲラと笑った。対称的に財前さんは丸々とした目を光らせて、自己紹介をしてくれた。

全身からサッカーへの愛がひしひしと伝わってくる。
この2人、絶対に実力ある、そう確信した。

もしかしたら私が代表になっていることを憎く思っているかもしれない。目を合わせる事が怖くなり、視線を下に落とした。

「今日はAと色々話したいんや〜
いやー代表に選ばれる位強い女子が居るなんて知らんかったわ〜
サッカー何歳くらいから始めたん？どこ出身？
てか好きな男子居るん？」
「リカ、多い多い。
あ、あと最後のは答えなくていいよ。」
財前さんはリカさんの口を封じる勢いでズバッと切り離した。

「ん～〜、あ！じゃあ技見してや！」
痺れを切らしたリカさんの言葉に反射的に後ろに下がる。
台風の如く素早い会話についていこうとした矢先、技という言葉だけが明確に聞き取れた。

「唯一の女子選手の技見たいんや！
あ、せや外出られへんか。」

ドキッとして、心臓が強く握られる。
冷や汗がダラダラと流れてきて少し手が滑る。
春奈ちゃんはどうしたのと言わんばかりの顔でマジマジとこちらを見る。

今まではあった？
サッカーを辞めていて出せなくなった？
そもそも技自体よく覚えていない？

駄目だ、どれを選んでも。
実力不足が選ばれる位なら私達が選ばれてもと。
顔を顰め、また視線を逸らしてしまった。