残念至極十年前の君へ【イナイレ】 (ページ28)

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26　ジョークな事情ページ28

先程の冷たさとは一変。暖かな雰囲気に変わり、思わず感嘆の声が出た。
外に出られない以上、本当に嬉しい。
周りも先程の出来事を忘れたように笑が弾ける。

オーストラリア代表。どんなプレーをするのか。少し調べてもパッとした情報がなかった。手に汗が滲む。昨日と同じ様にテレビを囲った。

試合開始と同時にこちらのボルテージも上がる。
選手がボールを蹴り出した瞬間、見慣れないボールが映った。これは＿

「「キャー！！」」
女性の甲高い声と共に、選手達が海で特訓しているシーンが多く見られた。
…サッカーは?

「見る意味ねぇじゃん。」
「それって役立たず。」

メガネ君は冬花さんの渾身の一撃でダウンしていた。
選手達が運動している姿を見ると、体を動かしたくてウズウズしてきた。
グラウンドの方を向いた後すぐに向きを戻す。自分達の状況をスッと思い出した。

「映像はないけど、私達が見つけた情報もあるの。」
「ビックウェイブスは海の男達らしいんです。」

海という言葉に綱海先輩が反応。
先輩は沖縄出身と聞いたから、海とは身近な存在だったのだと思う。

海の男達＿なら私は体幹をしっかり鍛えたい。
ひとまず体幹トレーニングの時間増やそうか。
クランチ、フロントブリッジ…

トレーニングを自分で考える事は不便だ。
ふと脳裏に懐かしい顔が浮かぶ。
ただもう忘れたい人で、瞬発的にその人の顔をボールに置き換えた。

部屋に戻ってベットに転がる。
技が打てる人に見せてもらおうという名案を思い付くも、肩を落としてまた枕に顔を押し付けた。
このままじゃ、本当に駄目なのに。

コンコンコンとドアが揺れる。
全く見当がつかず、疑心暗鬼でドアに近付いた。

「良かった…壁山君、どうしたの？」
「それがっスね、さっき虎丸が帰っちゃったス。
冬花さんが事情があるんじゃないかって」

＿事情？いつものように颯爽と帰ってしまった虎丸君に違和感を感じる。相槌を取れば、また一つ案を思い付いた。

「壁山君、試しに許可もらってみて、帰るからって」
「そんなのダメっス、事情無いッス。」
「そうだよね〜」

ジョークを交えた事を言い、ハハとワザとらしく乾いた笑いを出した。
壁山君はそのあまりの不自然さに目を細めた。

…この世界大会。日本がどこまで行けるのか注目されている、メディアも必死だ。
その監督は今選手を脅しながら監視している。
これは許されること？
そんな問いは、無惨にも誰にも届かなかった。