残念至極十年前の君へ【イナイレ】 (ページ25)

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23　脱走ページ25

特にすることもないので部屋に戻って勉強道具を広げた。お母さんに時々勉強するのよと言われ、渋々受け取った。
日本代表とはいえ、勉強も基礎的なことが抜けては駄目だ、中学レベルのことくらいちゃんと＿

勉強するからと背伸びして買った少し高いシャーペンはまだ輝きを帯びていて美しかった。消しゴムもまだ全然丸まっていなかった。

一番苦手な理科の参考書を開く、特に物理が嫌い。
わざわざ難しい言い方をしなくても重力だって存在するし、月には重力が無い事だって知ってる。
わざわざ遠回しな事をするから分かんない。

＿ね、眠い。
時計を見てもざっと30分くらいしか経ってなかった。嫌いなことはどうも時間が進まない。体感は1時間くらいは経ってるはずなのに。0.5倍速位になってる気がした。
…みんなは、グラウンドに居るんだ。

今日はこんなに晴れているのに、どこか風が冷たい。まだ何処からか子供たちの声が聞こえる。
みんなにバレぬようにと抜き足差し足で何とか宿舎から抜け出した。

技が、欲しい。

ひとまずジョギングで稲妻町を散策する。
商店街、駄菓子屋、本屋…
東京じゃないみたいだ、私の住んでるところもこういう景色がある。

「ママ見て、お城！」
「凄い、綺麗に出来たね！」
公園。親子が楽しそうに遊んでいる。
ふと脳裏にお母さんと一緒に線香花火をしたことを思い出した。本当に綺麗だった。
空に上がる大きな花よりも、ずっと綺麗だった。
…また、遊びたい。
そんな言葉は、声に出なかった。

＿線香花火…これ技に使えるんじゃないか。
一度思い付いたことを忘れぬようにと急いで宿舎に戻った。
通り掛かる人にイナズマジャパンだ！と言われた時は頬が緩んだ。
みんなも、そろそろ休憩時間だから。

うーん、思い付かない…
さっき広げた参考書をバッと退けてシャーペンをクルクル回すも、上手く形に出来ない。アイディアはあるのに。
シュート技、ディフェンス技、ドリブル技。
それすらも決まらなかった。

シュート技はロマン溢れるけど、有力なフォワードはいっぱい居る。何より私はシュート苦手だ。
ディフェンス技はメリットが大きいけど、私はミッドフィルダーだし…
ドリブル技は私のポジションに合ってるけど、今かなりパスに力が付いてきたし…

下手なペン回しでシャーペンを落とした。
突然面倒に感じ、白紙の紙を破ってㇵそのままゴミ箱に押し付けた。