残念至極十年前の君へ【イナイレ】 (ページ21)

今日:19 hit、昨日:43 hit、合計:14,936 hit

19　エイリア石は美しいとページ21

練習終わりに近くの本屋に行った。
そこそこ大きな本屋なので、サッカーのことを、運が良ければ監督のことも分かるかもしれない。

ふと新刊本コーナーに目を付けた。

[エイリア学園の真実]
明朝体でデカデカと書かれた文字に釘付けとなり、ついつい買ってしまった。
1500円…いやいや、問題ない。
少し恥ずかしかったので腕で隠し、狼狽えながら宿舎に戻った。

「あれAさん、どこか行ってたの？」
背筋が凍る。
後ろを振り向けば、長いまつ毛が真っ先に目に入る。
「き、基山君、ちょっと本屋に行ってただけだよ。」
「そうなんだ、僕も本読むの好きなんだよね。どんな本買ったの？」
…少なくとも彼はエイリア学園の件で良い思い出はない。
もしこの本を基山君の目の前に差し出したら。
何が起こるのかなんて一目瞭然だった。
変な行動で嫌われたくない。

「、ぇ、ぁ…と、トイレ行くからまたねー。」

本を抱えながら自室にすぐ戻った。
冷や汗がダラダラと流れる反面、基山君に見せたらという悪戯心が芽生えて危なかった。
明日も一緒に練習するという事は頭に入っておらず、今はただ安堵の息を漏らすだけだった。
自室に戻って来たら後はもう大丈夫。
ゆっくり袋から本を取り出してブックカバーを取った。
良かった、傷ついてない。

_
少しずつ本を読み進めていく。
宇宙人研究家というよく分からない人が書いていて、なんだか嘘のようなことばかり。
エイリア石を使用しない宇宙人も居る、帝国の影山も関係していた、など噂のような事ばかり書かれている、退屈だ。

折角買ったし…と天使が囁やき、あと1ページ、あと1ページと思いながら結局最後まで読んだ。

「エイリア石は美しい」
最後にこの言葉で締めくくられた。

今エイリア学園を良い組織と思っている人は居ないに等しい。
多くの中学校を破壊し、政府に大量のお金を使わせ、私達を苦しめ。
はっきり言って、良いことはなかった。

だがこの作者は自分の見解として、エイリア学園のことを肯定的に見ていた。
エイリア石は力を与えてくれる、自信を与えてくれる。美しいもの。
肩が揺れるのを自分でも感じた。

体力が無い。友好関係も無い。テクニックも無い。
日本を背負っているのに必殺技の一つも無い。

_力が、あれば。

ふと不穏な考えが頭によぎって頭を振る。
本を閉じ、机にポンと置いた。
その本の上にポンとジャージを置き、見えないようにした。

もうしばらくこの本を読みたくはない。