残念至極十年前の君へ【イナイレ】 (ページ12)

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10　武者震いページ12

2日程Aチームの人達と練習後、遂に運命の日がやってきた。

とにかくみんなこの瞬間に命を懸けていると言っているようだった。
走り込みやパス練等意外と基礎的なことを行ったが、付いて行くので精一杯。
改めて実力の無さをしみじみと感じる。

強者が集まれば集まるほど自分の情けなさだけが目立つ。2日がとてつもなく長かった。

すぐに体育館に入ると秋ちゃんから代表のユニフォームを渡された。
少し赤みを感じさせる明るい青色。
胸元には雷門中を想像させるイナズマのエンブレムが刻まれている。
思わず頬を上げた。
…Bチームはどうするんだろう。ビブスでも着るのかな。
「はいこれ、Aちゃんはあっちで着替えてね。」

指を刺された方向を見た後横をチラッと見ると男子たちが着替えていて、反射的にすぐに向きを戻した。
秋ちゃんが少し顔を赤らめて男子たちはここで着替えているからと伝えてくれた。

…ここへ来ている時、何度もシュミレーションを行った。大きく酸素を吸い込む。
大丈夫、きっと受け入れてくれる。

「ありがとう。よかったら…仲良く、してほしいな。」

この空間の中で正直秋ちゃんの存在は本当にありがたい。
数少ない女子。性別という同じ共通点がある。
よければ良い返事を＿

「もちろん、よろしくね！」

ドキドキと緊張する間もなく、彼女は即答してくれた。
話す、笑う、秋ちゃんの一つ一つの動作が円堂くんを彷彿とさせた。
彼女に軽く感謝を伝えて急いでトイレで着替え、ユニフォームを身に纏った、背番号は24番。
無意識にエンブレムを握っていた。

「おうA！着替えたか！」

円堂君の所へ戻ると、以前のように名前を呼ばれた。この練習期間で殆どの人とは会話を交えたが、
みんなの視線が集まるため出来れば辞めてほしい。
まだ直視される事に慣れていない。

「う、うん。」

ハハとあまりにも乾いた声が口から出た。
コミュニケーションは大事。サッカーはチームプレーなのだから。

「コイツを着て世界一になるぞ！」
円堂君の声に合わせて拳を上げ、私も遅れて拳を弱々しく突き上げる。
私のそんな弱々しい姿を見て、秋ちゃんは優しく微笑んでくれた。

体が小刻みに揺れ、右腕が無意識にガタガタと動く。
緊張なのか、武者震いなのかは分からないが、ここまで来たなら選ばれたいとユニフォームを着た体が叫んでいた。