Tu aimeras les gens et tu vivras fierement〈第十五章〉 (ページ10)

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よく似た母娘ページ10

「お母様が…妃殿下を糾弾した……？」

　母は、虚弱体質だったのであまり社交の場へ出られなかったと聞いた。もちろん、公爵令嬢として派閥を率いていたのだが、何せ虚弱体質である。中々社交の場に出られない母の代わりに従妹に頼んでいたらしい。それでいいのか、母よ

「そう。あの女は、妾を糾弾した。それは良いのだ。妾は確かに罪を犯した。それは事実故、それを否定する訳ではない」

「…母の哀れみが妃殿下のお怒りに触れたのですね」

「やはり…そなたはあの女によう似ておる」

　シレーナ王妃は、性根が腐っている。しかし、ある意味悪役(ヒール)のプライドというか…王妃としての矜持を持っている。そんな方が気に入らない相手に哀れまれるというのは腹に据えかねることだろう

「妾は、確かに民を虐げた。だが、あの女に哀れまれる筋合いはない」

「母は、あなたが育ってきた環境を知っていたのでしょう」

　母が遺した書類(リスト)の中にヴェルデ侯爵家に関するものがあった

　シレーナ王妃は侯爵家の姫として生まれ、王妃になるべく育てられた。しかし、それはヴェルデ侯爵家が利益を得る為のもので妃殿下は"ヴェルデ侯爵夫妻の駒,,として生きてきたらしい。つまり、妃殿下もまた愛情を受けずに育ったのだ

　お母様から一度もシレーナ王妃を糾弾したことを聞いたことはないけれど…哀れんでいたからこそ、嫌がらせも受け流せたのかもしれないわ。若干楽しんでいる節はあったけれど、いつもどこか哀しそうだったもの

「両親が妾を権力への駒として見ていなかったことも、妾を愛していなかったことも、妾は全て知っておった。が、それの何が悪い？愛してくれぬのなら愛さずとも良い。利用されるのならば、利用すれば良い。因果応報だろうと知らぬ。妾は妾の意志で進むのじゃ」

　誰かに哀れまれる筋合いなどない。…そう告げたシレーナ王妃は少しだけ寂しそうだった

　私たちは恵まれている。だからこそ、シレーナ王妃を哀れんでしまうのかもしれない。傲慢な優しさで、妃殿下を哀れんでしまった

「妃殿下が母を憎んでいるのは、母が恵まれているからではないのですか？」

「あの女の持ち得るものに興味はない」

　そう呟いたシレーナ王妃は本当に興味がなさそうだった

「あの女の血縁は生かしてはおけぬ。例え、それが子供であろうと許さぬ」

　シレーナ王妃の最後の言葉にはっ(・・)と閃く

「だから…イデアールを滅ぼしたのですか？」