父の過去と決意 ページ46
「…ということなの」
菫から父の過去と双女神の見解を聞き、深いため息をつく
「私は、そろそろ過去と決別しなければいけないわ。それによって何が齎されたとしても……」
あぁ…情けないわ。今の私には、支えてくれる人たちがいるというのに体の震えが止まらない……っ
「エルティアナ様」
そっと私の手を握ったシェリルは優しく微笑む
「私も、父と決別する時はすごく怖かったのです。でも、エルティアナ様が父を倒した時、ほんの少しだけホッとしました。もう、父に縛られずに済む…と。でも違いました。私を縛っていたのは、父ではなく私自身だったのです」
「シェリー、自身?」
「はい。亡き姉・シャーロットがエルティアナ様の無実を証明する書類を王家に献上した際に父に殺されたように、私も父に殺されるのではないかと怖かったのです。死を望んでいたのは楽になる為じゃない。本当は…父から逃げたかっただけ。父から逃げる手っ取り早い方法が死ぬことだったのです。エルティアナ様は、ラージュ陛下から逃げたいのですか?それとも、本当に決別したいのですか?」
「私は……」
「ユーリがどんな選択をしても、私たちはあなたの傍にいるわ」
「私たちは、あなたの家族で在りたいから。あなたの傍で、あなたと共に歩んで生きたいから」
「エルティアナ様?」
「
「え?」
目を二、三度瞬いたシェリルは私の言葉の意味を理解したようでボンッと顔を真っ赤にした
「あ…あの、違うんです!その…ですね…えっと……」
わたわたと慌てるシェリルが可愛らしくて笑いが止まらない。シュン…と恥ずかしさのあまり両手で顔を覆ってしまったシェリルの耳は顔同様真っ赤になっていた
「ありがとう、シェリー、菫。…部屋で待っててくれる?」
「え?」
「私、父の部屋へ行ってくるから部屋で待ってて。それから…帰ってきたら"おかえり,,って言ってくれる?」
パチクリと目を瞬いた菫とシェリーは顔を見合わせて嬉しそうに笑った
「「うんっ!/はいっ!」」
双子の天使の笑顔に胸がくすぐったくなり、私も思わず笑みを溢す
「いってきます」
「「いってらっしゃい!/いってらっしゃいませ!」」
双子の天使の見送りを受けた私は、愛情という名の盾を胸に父の元へ向かった
16人がお気に入り
「トリップ」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:アストライアー | 作成日時:2021年10月31日 10時