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時の女神が告げる少女の余命 ページ41

「長く、ない……?ユーリの…何が…長くないんですか……?」

 信じられないものを見たように瞳を揺らす菫の声は微かに震えていた

「ほんとは分かってるでしょ?…ルーちゃんの、生命の期限だよ」

 カチャン…と菫が添えていたティーカップが彼女の手の震えと共に小さく音を立てる

「どう、して…っ…だって…エルティアナ様は……!」

 虚弱とはいえ、生命に関わるほどのものではない。体への負担が大きい出産を控えている訳でも、重篤な病に罹っている訳でもない。それなのに、どうして余命を宣告されているのか。大切な家族(エルティアナ)を愛する双子の天使からは疑問と恐慌を感じる

「ルーちゃんはね、16歳で亡くなる運命なの」

「うん、めい……?」

 16歳。短命な人間に置き換えても死を迎えるには早すぎる年齢だ

「たった16歳。まだまだこれから、っていう年齢で死を迎えるように…運命づけられているんだよ」

「ユーリは…それを……」

「もちろん、知ってるよ。生まれたその瞬間から、知ってる」

 ずっと死を望んでいた一人の少女がやっと生きたいと願うようになった。それなのに、彼女に与えられた運命がそれを許さない

「本当は…誰にも言わないでって言われてたの。優しい君たちなら泣いちゃうだろうから、って。だから、これを知っているのは、精霊王族と六大精霊、それから主治医のセシルとマーリンくらいかな」

 余命を誰にも言わないで。その願いがどれほど残酷で哀しいものなのか、あの呆れるほどの甘さを持つ女神は知らない

「でも、私たちだけの秘密にしてね」

 この情報が他にバレるのは拙い。特にメリオダスとエリザベスには知られたくない

「ユーリが…助かる方法は……っ」

「賢い菫とシェリーなら、もう分かってるよね?」

 "女神の力,,や"女神の恩恵(ディア・グラース),,にある機密情報を最大限に使ってルーちゃんが助かる方法を探した。探して探して____…何も、見つからなかった

「ルーちゃんはもう長くない。だから、これはルーちゃんが生きた証。エルティアナ=リリアーヌという少女が存在した、その証なんだよ」

 もしも、ルーちゃんがこの世界から消えて居なくなったとしても、ルーちゃんに関わった全ての者の記憶からルーちゃんが消えてしまったとしても、この紅茶は消えない。だからこそ、私たちはこの紅茶を作った。エルティアナ=リリアーヌという、太陽のような少女が懸命に生き、存在したという証を

似たような経験を有する者→←姉へ捧げる存在の証



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作者名:アストライアー | 作成日時:2021年10月31日 10時

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