Tu aimeras les gens et tu vivras fierement〈第十五章〉 (ページ37)

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敵を知り、己を知れば百戦殆からずページ37

「いらっしゃい。待っていました」

　エルティアナ宮殿に転移した直後、ルナーリア様に連れられて来たのは彼女の私室(プライベートルーム)

「私たちが来ること…分かっていたんですか？」

「分かっていた…というより、あなたたちならそうするだろうと予測していただけです」

　どうぞ座って、と促された菫と私はミントグリーンのソファにちょこんと座る

「ユーリのご尊父様…ラージュ陛下がリオネスに来ることはご存知だったのですか？」

　ミントグリーンのリボンが描かれたティーカップに注いだ紅茶を一口飲み、ルナーリア様は口を開いた

「予め予知はしていました」

「アリー様がエルティアナ様を止めようとしたのはラージュ陛下がいらっしゃることをご存知だったから…ですね？」

「ええ。わたくしは一応精霊の女王ですからアリーやテティのように自由に人間界に行ける身ではありません。ですから、比較的自由な身であるアリーにお願いしたのです。結局、お姉様は聞き入れて下さいませんでしたが……」

　少し寂しそうに瞳を揺らし、紅茶を飲むルナーリア様はエルティアナ様を見送るアルテミス様によく似ていた

「ルナ様、ラージュ陛下に関する資料ってありませんか？」

「ありますよ。この宮殿には旧イデアール聖王家に属する全ての者の資料を保管する資料室がありますから」

「閲覧することは可能ですか？」

　私の言葉で部屋の空気が僅かに張り詰める。ルナーリア様の瞳が私の言葉の意図を探ろうとしている

「念の為に聞いておきますが…何の為に、ですか？」

「ラージュ陛下の生い立ちを知りたいのです。陛下がどのような生い立ちでどうしてあそこまで歪んでしまったのか…それを知りたいのです」

「知ってどうするのですか？」

「ラージュ陛下のことを知れば自ずと解決策も見えてくるのでは…と思っています」

　敵を知り、己を知れば百戦殆からず…ということわざもある。情報というのはそれだけ重要なのだ

「…分かりました。許可しましょう。但し、考えをちゃんと聞かせてもらうのが条件です。良いですね？」

「承知致しました。ありがとうございます、ルナ様」

　礼を告げるとルナーリア様が首を横に振る

「わたくしにできるのはこのくらいですから。…どうか、お姉様を宜しく頼みますね」

　ふわり、と優しく笑うルナーリア様の笑顔は少しだけ泣きそうだった。そんな彼女を見て顔を見合わせた私たちは力強く首を縦に振る

「はい！」