平穏な日々に終わりを告げる音 ページ25
「はぅ〜〜〜……」
何だか嫌な予感がするのは気のせいだろうか。嫌な予感に関する女神の勘はほぼ未来視と言っても過言ではないほど鋭い。その勘が嫌な予感を伝えているということは……
「何かあるのね」
「何かって何が?」
「そこまでは分からないわ」
蒼い瞳を瞬いて首を傾げる菫に肩を竦めて首を横に振る
ただ…シレーナ王妃が放った最後の言葉がちょっと気になるわね
"また面白いものを見せてやろう,,
面白いものって何かしら?まぁ…シレーナ王妃の面白いことは私にとって面白くないんだけど
「厄介なものに目をつけられちゃったわねぇ」
我ながら己の運のなさを呪いたくなるような相手に目をつけられたものである。抵抗すれば抵抗するだけ、護ろうとすれば護るだけ、相手は更に攻撃してくる。相手を喜ばせるだけ
「ま…なるようにしかならないわよね」
どうせ否が応でもシレーナ王妃の嫌がらせは続くのである。あれこれ心配しても意味はない
はぁ…とため息をついた私は空っぽになったラベンダー色のティーカップに紅茶を注ごうと同色のティーポットを持ち上げる。が……
「……ない」
いつの間にか中身がなくなっており、ガックリと肩を落とす
「私、やります」
「え、いや…王女様にそれは失礼すぎじゃ……」
「ユーリ、ここにいるのはただのエリザベスです。無礼講なのでしょう?」
「…では、お願いします」
「はい」
嬉しそうに笑ったエリザベス王女はティーポットを持って奥のキッチンに向かった。そんな王女に違和感を覚えるが、王女への信頼がそれを打ち消した
でも…エリザベス王女って紅茶を淹れたことあるのかしら?生まれは王家じゃないとはいえ、王室育ちのお姫様だし……
「そういえば…ユーリって王族なのに家事とか得意よね?」
「団長みたいに料理不味くないしね」
「ディアンヌ、メリオダス様に怒られますよ」
「ごめんなさ〜い」
全く反省してなさそうなディアンヌに思わず笑みが溢れ、若干拗ねたメリオダス様が脳裏に浮かぶ
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます」
コポコポ…とエリザベス王女手ずから淹れて頂いた紅茶の香りはとても美味しそうだった。それなのに何故か違和感が拭えない。色々考えながら紅茶を口に含むと舌がピリピリと痛む。その正体に思い当たり、吐き出すよりも先に反射的に紅茶を飲んでしまった
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作者名:アストライアー | 作成日時:2021年10月31日 10時