頭を撫でる効果 ページ4
「ゴウセル、いる？」
陽が暮れ始めた頃、私は物置にいるゴウセルに声をかけた。
〔ああ〕
「入るわよ」
ガチャ…と扉を開けると、ゴウセルが本に埋まっていた。
「埃まみれじゃな〜い！ほら、立って」
ゴウセルを立たせ、パンパンと埃を払う。
「全く…ここも少し掃除が必要ね」
〔ユーリがするのか？〕
「あら、いけない？」
〔物語では、王女は掃除などしない〕
「そうねぇ。でも、私は嫌われ王女だから。何でも自分で出来ないと生きていけなかったのよ」
〔……よしよし〕
「ゴウセル？」
ゴウセルに頭を撫でられ、目を瞬く。
〔お前が寂しそうだったから頭を撫でた。頭を撫でると、ストレスを軽減する作用があるらしい〕
「そういえば…そうね」
頭を撫でると、その刺激は脳へ届き、オキシトシンという人を信頼する気持ちを強めるホルモンが分泌される。血圧を下げたり、ストレスホルモンの血中濃度を減らしたりする効果があるのだ。
(私…結構、菫とかに頭ナデナデしてるけど…あれは無意識に信頼してほしいと願っているからこその行動なのかしら？)
〔ユーリ、用件はなんだ？〕
「ああ…私と一緒に本を買いに行かない？」
〔何故だ？〕
「たまには私とデートも良いでしょう？」
〔……了解した〕
首を縦に振ったゴウセルは、私に手を差し出す。
「ゴウセル？」
〔さあ、姫君よ！私と共に行こうぞ！〕
(また本に影響されたのね)
「ええ、喜んで。騎士様」
ゴウセルの手を取った私は、ヴンッと転移魔法を発動させ、〈豚の帽子〉亭の外に転移した。
〔何故、転移魔法を使う？〕
「みんな、色々忙しいのよ。だから、邪魔しないように…ね？」
無表情のゴウセルの心は読めない。なので、納得したのかしていないのか分からないがそれ以上追及されなかったので少しホッとした。
「ゴウセルはどんな本が欲しいの？」
〔本なら何でもいい〕
「まぁ…それは確かに」
私も文字が読めるなら何でもいい。本好き同士、似ているのかもしれない。
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作者名：アストライアー | 作成日時：2023年4月1日 14時
