大好きなあなたへ〜夜明けの女神と伝説〜〈番外編２〉 (ページ11)

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巫女姫と王女を愛する者ページ11

「ふぅ……」

　ガーデンパーティーの会場から少し離れた場所にあるベンチに座り、ホッと一息つく。

　(ああいう場所はやっぱり苦手だわ)

　持ってきた冷たいリンゴジュースを飲むと、火照った体の熱が少し冷えていく。

　(誕生日…か)

　全ての者に平等に訪れる、自分が産まれた日。私は、その日があまり好きではない。

「たんじょうびなんて…こなければいいのに」

「＿＿＿＿んな悲しいこと言うなよなー」

「！」

　聞き慣れた、男性にしては少し高めの声。私が愛する人の声。

「メリオダスさま……」

　私の後ろには、にししっと悪戯が成功したような子供の笑みを浮かべたメリオダス様がいた。

「エリーねえさまのごえいはどうしたんですか？こんなところであぶらうってるとちちうえにしかられますよ」

「寂しそうな王女様を見つけたからな。エリザベスなら聖騎士たちに守られるから大丈夫だ」

「……べつに、さみしくなんか……」

　独りは慣れている。だから、孤独を感じても寂しくなんてない。

「ていっ」

「いたぁっ！」

　パチンッとデコピンされ、額を押さえる。

「いきなりなにするんですか！」

「嘘つきにはお仕置きだ」

「そのせりふ、まんまブーメランでじぶんにかえってきてますよ」

「うっせ」

　生ぬるい風が私たちの頬を撫でる。

「バカだな、お前」

「ばかってひどい！」

「事実だろ。なんで寂しいのを我慢するんだ？寂しいって言えばいいだろ。バルトラもマーガレットもベロニカもエリザベスも抱きしめてくれるぞ。お前のこと、愛してるの知ってんだろ？」

「わかってます。でも…ちちうえたちにこれ以上迷惑をかけたくないんです。ただでさえ、わたしはせいきしやじじょたちにきらわれていますから」

　エリザベスのように可愛げがない私は、嫌われて当然だと思う。だからこそ、そんな私を愛してくれる父上や姉様たちの迷惑になりたくない。

「不器用な奴」

「あなたにだけはいわれたくありません。ところで、メリオダスさまはエリーねえさまになにをさしあげるんですか？」

「犬のぬいぐるみ」

「センスがない」

「くまのぬいぐるみはベロニカが渡したからな。同じモンあげるわけにゃいかねーだろ」

「…それもそうですね」

　互いに無言になる。それが少し気まずい。

　(お誕生日おめでとう、エリザベス)

　パーティー会場を見つめ、私は心の中でそう呟いた。