〜精霊姫の心〜 ページ13
「リリィ」
わたくしの母であり、精霊女王・ルナーリア様は、少し困ったように微笑んでわたくしの名を呼ぶ
「あなたがルティ姉様を厭う理由は分かっているつもりです。ですが、どれだけ厭う相手でも死んでも良いなどと言ってはなりません。己が厭う相手にも、相手を大切に想う者や相手自身が己を誇りに思っているかもしれないでしょう？例え、その愛や誇りがあなたには理解できないものだとしても、相手にとっては大切なものなのですから」
「…それは、分かっています」
頭では分かっている。あの方がエリー様を憎む理由も、あの方が精霊から離れた理由も。しかし、心では納得できない。エリー様を憎む理由は、愛する者を奪われたから。精霊から離れた理由は、精霊を護る為。後者はまだしも、前者は完全に我儘ではないか。確かにエリー様にも落ち度はあるかもしれない。けれど、相手が誰を想おうと相手の自由。愛する者を奪われたからと言って相手が愛する女性を憎むのはお門違いだ
「心がついていかないのでしょう？」
「……はい」
「…愛する者に裏切られるというのはとても辛く、哀しいことです。姉様は、身を引き裂かれるような痛みを幾十…幾百と繰り返してきました。エリザベス姫に悪意はないでしょう。あの方は、とても優しい姫君ですもの。けれど、だからといって誰かを傷つけても良いのでしょうか？悪意がなければ、意識してやらなければ、許されることなのでしょうか？」
「それは……」
「もしかしたら、自分では気が付かないうちに誰かに深い傷を負わせているかもしれない。傷は癒えるけれど、消えることはありません。過去を忘れることができるかもしれないけれど、なかったことにはできません。だから、言葉を告げる時は相手がどんな気持ちになるかを考えて発言なさい。相手を非難したいのなら、まず自分が相手の考えを理解しようと努力なさい。どうしても相手の考えが自分の考えと相容れず非難するのなら、自分が凶器を持って相手を傷つけるかもしれないということを自覚なさい。それができないのなら、相手を非難すべきではありません。自分の意見は理解しないけれど相手の意見は理解しない、なんてものはただの我儘です」
「……はい」
私が生きた数百倍の年月を精霊を統べる女王として生き、苦楽を経験してきた母の言葉には重みがある
母に優しくも厳しい言葉を告げられた私は、拳を握りしめて頷いた
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 129人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「オリジナル」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
鈴 - 名前固定ならそう書いていた方がいいと思います。気にはなりましたが名前固定だと読む気失せる人もいるので。 (3月8日 7時) (
レス) id: 8354ac6e82 (このIDを非表示/違反報告)
pomme(りんご)(プロフ) - 天乃みなさん» 追記です。ユーリという名前にも一応理由があるのでそのようにしています。…いつ明かすかはまだ決まっていませんが (2021年9月29日 20時) (レス) id: 36cb2cfed7 (このIDを非表示/違反報告)
pomme(りんご)(プロフ) - 天乃みなさん» はい。名前を変えたら私がちょっと分からなくなるので……。ご不快でしたら申し訳ありません (2021年9月29日 20時) (レス) id: 36cb2cfed7 (このIDを非表示/違反報告)
天乃みな(プロフ) - これって名前固定なんですか？ (2021年9月29日 20時) (レス) id: ec35f73fd4 (このIDを非表示/違反報告)
yuu11da(プロフ) - オリジナルフラグは取れているでしょうか？もし、宜しければご意見をお聞かせ下さい (2021年5月25日 18時) (レス) id: cf9e4ba859 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：アストライアー | 作成日時：2021年5月25日 18時
