66話 ページ18
Aside
いよいよ夏休み。
殺せんせーへの島での暗殺まであと1週間あるので、クラスみんなは学校で訓練をすることになっている。
夏休みの特別講師として、イリーナ先生の師匠、ロヴロ先生を招いていると烏間先生が教えてくれた。
わたしも参加したかったのだが、病み上がりのため父に止められてしまった。
代わりに防衛省の屋内射撃練習場を借りてくれたので、そこで射撃の練習をしている。
「…だいぶ上手くなったな。」
ずっと練習をみてくれている父に褒められ、嬉しくなってくる。
「わたしが出来そうな訓練はこのくらいだから、頑張らなくちゃいけないの。」
そう、わたしができることは射撃だけ。
みんなのようにはできない。
だから、せめて射撃は上手くなりたい。
千葉くんや速水さんみたいに、クラスの暗殺の役に立てるくらいに上手くなりたいな。
「A、見えてきたよ。」
東京から船で6時間。
この普久間島で、わたし達は暗殺を決行する。
ホテルに着いてすぐ、サービスでトロピカルジュースが出された。
トロピカルジュースかあ。
飲めないんだよね。
わたしは申し訳ない思いを抱きながらその飲み物に手をつけなかった。
みんなは暑いせいもあって喜んで飲んでいる。
わたしは持参の水筒のお茶に口に含む。
わたしたちは計画書(プラン)通り暗殺が出来るかどうか、綿密に現地をチェックして回るため、修学旅行の時のように班別行動をとった。
1つの班が殺せんせーと遊ぶ間に、他の班が着々と準備を進める。
「うまい事やってんなぁ〜、1班の陽動。」
「やるもんだね〜。ちゃんと暗殺も混ぜて…他の班に目が行かないようにしてる。」
1班の陽動作戦を見ながら感心している杉野くんとカルマくん。
「次はうちの班に来る番だよ! やる事やってすぐに着替えないと!」
「おう!」
茅野さんの声かけでカルマくん、杉野くん、渚くん、中村さんが海に潜る。
4人が海に潜っている間に、わたしと茅野さんで殺せんせーの様子を観察する。
次の神崎さん、奥田さん、不破さん、原さんたちの班が船でイルカを見るらしい。
さっき殺せんせーは船酔いをしてたから、上手くいけば、殺せんせーを弱らせて暗殺することができる。
そう、思ったのに…
「…何、あれ。」
殺せんせーは船には乗らず、魚の水着を着て、イルカと一緒に泳いでいる。
「これじゃ暗殺できないじゃん!」
茅野さんのガッカリしたような声。
わたしも同じ思いだった。
せっかく良い作戦だと思ったのに。
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作者名:麻倉 真音 | 作成日時:2020年5月5日 23時