61話 ページ13
Aside
教室にクーラーのないわたしたちE組は、殺せんせーに連れられて、裏山の木陰で涼みながらテスト勉強をしていた。
殺せんせーは期末テストでは総合点の他にも、教科ごとに1位を取った者に、触手を1本破壊する権利を進呈すると言い出した。
総合と5教科全てで1位を取る事ができれば、合計で6本もの触手を破壊する事ができる。
でも、いまのわたしの成績では教科別での1位なんて夢のまた夢。
一学期をかけてやっと休んでいた間の復讐が追いついてきたのだから。
1年の頃はA組だったけれども入院を繰り返すようになってからは勉強に追いつけなくなり、今ではE組。
それでもこのクラスに来れてよかったと思う。
暗殺ではほとんど役に立てないわたしだからこそ、せめて勉強では役に立ちたいのに。
休み時間になり、教室へと戻る。
「教科1位で触手1本かぁ。」
「ええ、頑張りましょう!」
渚くんの呟きにやる気に満ちあふれた奥田さん。
「珍しく気合入ってんじゃん、奥田さん。」
その奥田さんに声をかけるカルマくん。
「はい! 理科だけなら、私の大の得意ですから! やっと皆の役に立てるかも!」
「ウチにも上位ランカー結構いるから1位だけならトップも夢じゃないかも!」
みんなが話しているのを聞いてわたしもやる気が出てきた。
杉野くんのケータイがなった。
相手は球技大会で戦った進藤くん。
A組は総力をあげてE組を本校舎へ復帰させないつもりらしいという内容だった。
わたしだって一応元A組だった。
頑張れば1位とれるかもしれない。
暗殺では役に立たないけど勉強ならみんなの役に立てるかもしれない。
みんなの顔も怯むよりもやる気に満ちあふれた顔だった。
それからわたしはみんなの役に立ちたくてひたすら試験勉強をした。
自分の体調が悪化していることにも気がつかずに。
気がつくとそこはいつも通っている病院のベッドの上だった。
「あ、れ?」
そばには心配そうにわたしの顔を覗き込む母の姿があった。
わたしは無理をしていたようで高熱が出て寝込んでいたようだ。
腕にはもう何度もしている点滴の針。
まだ熱が高いようで身体は怠いし、頭はボーッとする。
母にこれまでの経緯を聞いていた途中で見慣れた主治医が病室へ入ってきた。
軽く診察した後に熱が下がるまでの入院治療を言い渡された。
それは期末テスト数日前のことだった。
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作者名:麻倉 真音 | 作成日時:2020年5月5日 23時