Signal.

19 -side N- ページ19

「〜〜〜っいい加減にしろよ！」


こんなに怒った隆二を見たのは数年ぶりかもしれない。

しかも臣相手に。


「なんであんな言い方しかできねえんだよ！Aちゃんは俺らのせいで、」

「…俺らのせい？」

「そうだろ！」

「じゃあ隆二は止められんの？俺らがあいつに嫌がらせすんのやめてください〜ってお願いすれば終わるとでも思ってんの？」

「…それは、」


臣の胸ぐらを掴んだまま、隆二は言い淀む。

その隙に臣も、隆二の胸ぐらを引き寄せた。

…ああ、怒ってる。

冷静な顔を崩さないまま、静かに…でも、確かに。

臣の瞳は怒りで鋭く尖っていた。


「無責任なんだよ、何もかも。出来もしないこと言って希望持たせて何になんだよ」

「だからってなあ！」

「それがあいつのため、ってこと？」

「…………っ」


…臣はAさんのこと、嫌いなんだと思ってた。

でも、これじゃまるで。


「…全部お前のための間違いだろ」

「はい、そこまで」


殴りあう寸前まで張り詰めた空気を、直己が分断する。

黙って見てることしかできなかった健二郎とELLYと岩ちゃんも、思うところはあったようだった。


『…気は済んだ？』


返事は、なし。


『隆二も、臣も…言いたいことはわかるよ。でも冷静じゃない』

「……そうですね。ちょっと、頭冷やしてきます」

「…………」


部屋を出て行く二人の背中を見て、ため息。


「…お疲れ様」

『ん…直己も、ありがとね』

「……何で上手くいかへんのやろなあ…」

「あの二人、考えてることは同じ…ですよね」


そうなんだよなあ。

Aさんという小さな歯車が合わさっただけでどうしてここまで噛み合わなくなるんだろう。


『…俺らが潤滑油になるしかないよ』


お互いに芯が強くて、でも不器用で。


『全く…変なとこは似るんだから』


Aさんの力になりたいって、素直に言ったらいいのに。


「本当ですよ…でも、どうします？」

「Aさん、自己犠牲体質っぽいですしね…」

「俺らがどうこう言っても…」

『そこなんだよね…』


隆二の言い分も、臣の言い分もわかる。

じゃあ、一番いい方法は？


「…難しいっすね」

「とりあえず俺たちだけでもAさんに心開いてもらうしかない、かな…」


直己の意見に、みんな頷いた。

…でも。

俺の頭の中では、臣に近づかれて震えていたAさんの顔がフラッシュバックしていた。

何度も、何度も。

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