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事務所で打ち合わせ。
なんてことない日。
…だったはずなのに。
「あ…っ」
「…なんやまだおったんか」
「……」
真っ先に今市さんが気づいて、健二郎さんが口を開いて…全員の視線が私に刺さる。
隣で打ち合わせ、なんて。
私が三代目さんに嫌われてることくらい、この会社じゃほとんどの人が知ってるはずなのに。
…ここですら、居場所ないのかな。
「打ち合わせ?」
『そうです』
「…ふーん」
自分から聞いておいて、興味なさそうなELLYさん。
『…じゃあ、失礼しま』
「待って」
一刻も早く逃げたかったのに、直己さんが私の腕を引き寄せる。
「…Aさん、臣に謝ったの?」
『え、あ…』
「ちゃんと謝ってくれないかな、怪我させたこと」
語りかけるような声色とは裏腹に、普段は凪のような瞳には紛れもない怒りが滲んでいて。
違うと分かっていても、思い出さずにはいられない感触が過る。
「そうだね…謝って。それで俺らにはもう関わらないで?」
今面倒ごと起こされるのが一番困るんだよね、なんて冷静を装ってるけど、きっとそんなNAOTOさんが一番怒ってる。
ちらりと臣さんを見ると、スマホを弄って素知らぬ顔。
「ちょっとNAOTOさんそれ言い過ぎ…」
『わかりました』
「Aちゃん!」
『いいんです』
庇う今市さんに構わず、臣さんの横に立つ。
『登坂さん』
今度は、間違えないように。
『手を上げてしまってすみませんでした』
頭を深く下げて、唇を噛む。
「わ、素直」
「もう俺らがいなくても一人前、ってかんじだもんねAさんは」
「あー…この機会に手切っちゃえ、てこと?」
「なるほどねー」
顔が見えなくてよかった。
好き放題に言うメンバーさんを前に平常心を保つなんて、私にはできないから。
「臣さん、どうするんすか?」
「……」
岩田さんの問いかけに、臣さんの身体がこちらを向く。
「……別に、どーでも」
ああ、やっぱり。
臣さんの言葉が一番、痛い。
「臣!いい加減にしろって!」
「…何?隆二…やけにそいつの肩持つな」
「言い方とかあんだろ!?」
『もういいんです!』
耐えきれなくなって大声を出すと、臣さんに掴みかかる寸前の今市さんが固まる。
『今からが大事な時なんじゃないんですか…?こんなことで揉めてる場合じゃ、』
「キャアアア!」
張り詰めた空気を切り裂いた甲高い悲鳴は、私が打ち合わせをするはずの…隣のブースからだった。
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nao(プロフ) - 更新停止になっていてびっくりですT_T悲しいですT_T (2015年10月4日 15時) (レス) id: 2587847f15 (このIDを非表示/違反報告)
Mao(プロフ) - すっごく面白いです!更新楽しみに待ってます♪ (2015年10月1日 1時) (レス) id: 7f488f7675 (このIDを非表示/違反報告)
ゆと(プロフ) - あゆさん» コメントありがとうございます。主人公と三代目の関係も少しずつ発展していきます。なるべく早く更新できるよう頑張りますので、お付き合いいただけると嬉しいです。 (2015年8月30日 8時) (レス) id: c51140edff (このIDを非表示/違反報告)
ゆと(プロフ) - 三代目fanさん» コメントありがとうございます!主人公と三代目がどうなっていくのか…更新はゆっくりですが、想像しながらお待ちいただけると嬉しいです。 (2015年8月30日 8時) (レス) id: c51140edff (このIDを非表示/違反報告)
あゆ(プロフ) - おー面白い(≧▽≦)何のタイムリミットなの?気ーにーなーるー!!更新、めっちゃ待ってますよ! (2015年8月29日 22時) (レス) id: 7f78f03745 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆと | 作成日時:2015年5月19日 19時