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「本当に仲がいいんですね、登坂さんとAさんは」
「そうですね」
『私には勿体無い人です、臣さんは』
「そんなことないですよ!まさに美男美女、とってもお似合いです」
記者の方とのこんなやりとりは、もう何度目だろうか。
飽きるほどされた同じような質問、同じような褒め言葉。
その全てに嫌な顔ひとつせず、真摯に対応している臣さんの横顔は穏やかで綺麗だ。
本当に私のことを愛して、支えて、包み込んで…世の女性の誰もが羨むような。
そんな理想のパートナーとも呼べる姿が、そこにはあった。
…でも、実際は。
「…あんま、寄らないでくれる?俺が全部やるから…あんたはいらないことしないで」
『すみません臣さ、』
「登坂。何回言ったらわかんの?あんたに臣とか呼ばれたくない」
『…すみません、登坂さん』
ふたりきりになると、臣さんは豹変する。
…それも、仕方のないことだけど。
週刊誌に載せられた臣さんの熱愛報道。
相手は、私。
同じ事務所なんだし、と知人が仲介をしてくれてその日初めて挨拶をして。
そのまま他のスタッフさんたちと共に行った食事の場で写真は撮られた。
もちろん私と臣さんはそんな関係じゃないし、あの日だってそんなに会話もしていないけど…誌面には、あたかもふたりきりで食事をしていたかのように書かれた。
今が転機ともいえる重要な時期に入っていた三代目J Soul Brothersには大きな痛手ともいえる出来事。
HIROさんが下した判断は…熱愛を”否定しない”ことだった。
でも否定しなければ、向こうは肯定と捉える。
若者に人気の臣さんと、駆け出しのモデルの私。
こんなの、ただの売名行為だ。
そんなことをしてまで世間に認知されたくない。
…もちろん、そう反論はした。
結果は、変わらなかった。
「こんな汚いやり方で売名して楽しい?」
私は多分、臣さんの凍りつくような視線を一生忘れることはない。
「俺は、あんたが嫌い」
そしてこの言葉も。
好きでこんなのやるわけじゃない。
…そんなこと、言えるわけがなかった。
ずっとずっと憧れていた臣さんから真っ直ぐに向けられた拒絶の言葉。
胸が抉られたみたいに痛かったけど…ここで言い返したら、また拗れるから。
だから黙って俯いた。
あれから数週間、臣さんの私への態度は良くなるどころか日に日に悪くなる一方だ。
毎日のように睨まれて、罵られて。
でも、でも。
私はそんなあなたに、今でも恋をしている。
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nao(プロフ) - 更新停止になっていてびっくりですT_T悲しいですT_T (2015年10月4日 15時) (レス) id: 2587847f15 (このIDを非表示/違反報告)
Mao(プロフ) - すっごく面白いです!更新楽しみに待ってます♪ (2015年10月1日 1時) (レス) id: 7f488f7675 (このIDを非表示/違反報告)
ゆと(プロフ) - あゆさん» コメントありがとうございます。主人公と三代目の関係も少しずつ発展していきます。なるべく早く更新できるよう頑張りますので、お付き合いいただけると嬉しいです。 (2015年8月30日 8時) (レス) id: c51140edff (このIDを非表示/違反報告)
ゆと(プロフ) - 三代目fanさん» コメントありがとうございます!主人公と三代目がどうなっていくのか…更新はゆっくりですが、想像しながらお待ちいただけると嬉しいです。 (2015年8月30日 8時) (レス) id: c51140edff (このIDを非表示/違反報告)
あゆ(プロフ) - おー面白い(≧▽≦)何のタイムリミットなの?気ーにーなーるー!!更新、めっちゃ待ってますよ! (2015年8月29日 22時) (レス) id: 7f78f03745 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆと | 作成日時:2015年5月19日 19時