50 ページ50
迷いそうになりつつもなんとかたどり着いた事務所には数人の社員さんがいて、もちろんお仕事に追われていた。
強制お泊り決定。
「なんで僕まで…」
仮眠室まで連れて来られてもなお乗り気じゃない僕に、首を傾げる涼太くん。
「隼の家にはお泊りしたんでしょ？そんなに俺と一緒が嫌？」
隼何で教えてんの…。
『…酔っ払いと一緒なのは嫌』
ベッドに腰掛けながら素直に言うと、涼太くんは子どもみたいに頬を膨らませた。
顔立ちもあいまって、ものすごくハムスターみたいに見える。
『ふふ…何その顔。別にいいよ、ここまで来たらもう泊まるしかないんだし。隼の家に泊まった時も、取り押さえられて強制お泊り会だったから』
「…ふーん」
まだ少しむすっとしたままの涼太くん。
…ちょっと拗ねてる？
『…涼太くんのわがままに答えるのが僕からの誕生日プレゼントってことで。アメスタまで知らなかったんだからプレゼントなんて買ってないし、これで我慢して』
「…………じゃあこっち来て」
涼太くんはベッドに入ると、自分の横のスペースを軽く叩いた。
『はいはい』
大人しく指定された場所に腰掛ける。
「んー…違う」
『っわ、』
お気に召さなかったのか、涼太くんはベッドに僕を引っ張り込んだ。
突然の事で抵抗も出来ず、すっぽりと涼太くんの腕に抱きすくめられてしまう。
「添い寝」
へへ、とご機嫌に戻って言う涼太くん。
『…何で僕と』
「え〜？だって…SHINOのこと好きだもん」
グッと腕の力が強くなって、涼太くんの胸に押し付けられる。
高めの体温と、お酒と涼太くんが混ざった匂いが一気に僕に流れ込んできた。
『僕も好きだよ、涼太くんのこと』
涼太くんの背中をぽんぽんと叩いてなだめるように言うと、少し腕の力が緩まった。
「…違うよ」
僕と目線を合わせるようにした涼太くんは、酔ってることを忘れさせるくらい真面目な顔。
「俺は、SHINOが好きなの。異性として」
…冗談でしょ。
そうやって笑い飛ばしたいのに、涼太くんの真剣さがそれをさせてくれない。
「俺…最初から、気付いてたよ。SHINOが女の子だって」
どうして。
問いただしたいのに、動揺しすぎて身動きも取れない。
「…好き」
だんだん近づいてくる涼太くんの顔。
「好きだよ、SHINO」
触れる寸前でもう一度つぶやくと、涼太くんは固まったままの僕にキスをした。
ファーストキスは、少し苦いレモンサワーの味がした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 78人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆと(プロフ) - 片寄画伯さん» 5で明言していますが、主人公は女性です。紛らわしくてすみません…。 (2014年11月26日 23時) (
レス) id: 05ad7016c2 (このIDを非表示/違反報告)
片寄画伯(プロフ) - 主人公は女ですか？ (2014年11月26日 23時) (レス) id: 85bff416cc (このIDを非表示/違反報告)
ゆと(プロフ) - 乃愛さん» ありがとうございます。短編も長編も頑張っていきますのでよろしくお願いします！ (2014年11月24日 0時) (レス) id: 05ad7016c2 (このIDを非表示/違反報告)
乃愛 - ゆとさん» あらすじを決めるまでがスランプなんですね、笑 結局、何も分からないとスランプにはなるもんなんですね。笑← 短編も見てます！めっちゃ面白いです。両作品これからも頑張ってください！応援してます。 (2014年11月23日 21時) (レス) id: 7d48793382 (このIDを非表示/違反報告)
ゆと(プロフ) - 乃愛さん» 他の作者さんの作品もたくさん読みますよ！他の人が書いたもののほうがやっぱり面白いので…笑 私はあらすじを決めるまでに結構悩むので、お話が思いつかないとスランプにもなりますね…。今は短編にも挑戦しているんですが、やっぱり小説を書くのは難しいです。 (2014年11月23日 10時) (レス) id: 05ad7016c2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆと | 作成日時：2014年10月28日 11時
