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『役が抜けなくなるってなにさ…』
「…そのままの意味だよ。Aこの1年、最後に演じたあの舞台…高校のときの。あのときの役のままだよ。性格も口調も。SHINOも、それがベースになってるでしょ」
言いづらそうに、でもひとつずつ、真実を突きつけてくる龍友兄。
そう、自分でも気づいてる。
自分が憑依型の役者だってことに。
演じるとその役に取り憑かれたように豹変する。
でも僕の悪いところは、終わっても役が抜けきらないところで…だから新しい役を演じるたびに、普段の自分もその役に近づいていってしまう。
変化は一人称から始まり、それがだんだん性格、考え方までその役に近づいていって…そしてまた新しい役を演じると性格が変わる。
…自分の素がいまいちわからなくなるくらいには、僕はもう別人に憑かれている。
『龍友兄、気づいてたんだね。…でも、そっか。さすがに気づくか…これだけ変わったら』
「当たり前だろ…何年お前の幼馴染やってると思ってんだ」
龍友兄はずっと一緒にいた。
僕のやっていた舞台だって所詮部活動。
学校の体育館をメインに地域の小さなステージで行われるボランティアみたいなものだったのに、龍友兄は頻繁に来てくれていた。
忙しくなった後は回数は減ったにしろ…最後の舞台も、龍友兄はこっそりと見にきてくれていた。
『…自分でも、もうよくわかんないんだよね。根本的な部分はきっと”A”のままなんだろうけど…』
きっともう、今の僕も”SHINO”であり”外崎律”に少しずつ変化しているんだと思う。
認めたくない事実。
空っぽの胃に水を流し込んで、こみ上げる吐き気を軽減させる。
龍友兄にはごまかしが効かないのはもうわかっているから…言ってしまって楽になるほうが早い。
それこそ…”外崎律”みたいに。
『”A”が、もうわかんないんだ。自分のことなのに…だから、どんどん新しい人に憑かれて自分を無くすのが怖い。これ以上自分を見失いたくない。…だから、続けられない』
初めて告げる本心。
声が震えて、みっともなく涙がこぼれた。
こんな時でしか心の奥底の”A”の存在を確認することができないなんて、悔しい。
「……そっか」
龍友兄はそれ以上言及せず、僕の頭を優しく撫でてくれた。
あったかい龍友兄の手を感じてまた涙が止まらなくなって。
［あのさ…変に演技、しないほうがいいよ］
泣いている僕の頭の中では、あの日玲於に言われた一言が何度も反響していた。
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ゆと(プロフ) - 片寄画伯さん» 5で明言していますが、主人公は女性です。紛らわしくてすみません…。 (2014年11月26日 23時) (
レス) id: 05ad7016c2 (このIDを非表示/違反報告)
片寄画伯(プロフ) - 主人公は女ですか？ (2014年11月26日 23時) (レス) id: 85bff416cc (このIDを非表示/違反報告)
ゆと(プロフ) - 乃愛さん» ありがとうございます。短編も長編も頑張っていきますのでよろしくお願いします！ (2014年11月24日 0時) (レス) id: 05ad7016c2 (このIDを非表示/違反報告)
乃愛 - ゆとさん» あらすじを決めるまでがスランプなんですね、笑 結局、何も分からないとスランプにはなるもんなんですね。笑← 短編も見てます！めっちゃ面白いです。両作品これからも頑張ってください！応援してます。 (2014年11月23日 21時) (レス) id: 7d48793382 (このIDを非表示/違反報告)
ゆと(プロフ) - 乃愛さん» 他の作者さんの作品もたくさん読みますよ！他の人が書いたもののほうがやっぱり面白いので…笑 私はあらすじを決めるまでに結構悩むので、お話が思いつかないとスランプにもなりますね…。今は短編にも挑戦しているんですが、やっぱり小説を書くのは難しいです。 (2014年11月23日 10時) (レス) id: 05ad7016c2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆと | 作成日時：2014年10月28日 11時
