12日目.五円玉 ページ46
静寂が僕らを包んだ。
元幽霊も、僕も、お互いのことを呆然と
見つめている。そして、お互いの目には
これまでの記憶がありありと写っていた。
元幽霊の口は再びゆっくりと開かれ、そして
あの頃と同じような口調でこう言った。
「……律……？」
「……うん」
「……律、覚えてる……？」
「うん……全部覚えてるよ。思い出したんだ。今までのこと。……君も？」
元幽霊はこくり、とゆっくり頷いて見せた。
目に、透明な雫が浮かぶのが見えた。
そして僕の視界もじんわりと歪んだ。
僕らはお互いに分かっていた。
今、何が起こっているのかを。
「律、私、死んじゃったかと思ったけど、でも、またこうやって会えたよ……律……」
彼女は柔らかく笑いながら、大粒の涙を
零した。陶器のような頬を伝い、雫が地面
へとおちる。
僕もひたすらに「うん」と短く返事をする。
僕の頬にも生暖かい液体が伝う。
「ほんと、ひどいよ。君が催眠術を失敗したばっかりに、あのあと、僕がどんな思いをしたと思ってるんだ」
「ごめんね、律。私迷惑かけてばっかりだね。でもね、私本当に嬉しいんだよ。律、律……」
元幽霊の声は涙を含んで僕の名前を呼ぶ。
それを聞いた僕の視界はグニャグニャに
歪んで、もう何も見えない。
元幽霊は僕の右手に握られた五円玉にそっと
触れ、そして僕の手ごと上から包み込むように
握った。
僕らの長い10日間は今、ようやく終わったのだと思った。
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見毛 - すごい丁寧に書かれていてお話も面白い…とても面白いです…!律くんかっこいいなぁ…更新楽しみにしています (2019年4月2日 3時) (
レス) id: fc0f2493d3 (このIDを非表示/違反報告)
ロイちゃん(プロフ) - めちゃくちゃ好きです！更新頑張ってくださいっ！！ (2016年11月22日 6時) (レス) id: 0dbc3b26b1 (このIDを非表示/違反報告)
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作成日時：2016年10月23日 17時
