11日目.空っぽ ページ40
「おはよう、影山くん。その……町田さん、まだ来てないみたいなの。もし学校に来たら、先生に教えてくれる?」
「わかりました」
転校生として元幽霊が僕の目の前に現れた翌日の今日。元幽霊は今日からこのクラスの一人として加わるはずだったらしいが、依然として本人は来ないのだという。
昨日の様子を思い出せば納得もいく。幽霊のときとは違って、相当な引っ込み思案のようだったから。
「来てくれるかしらね……」
「さぁ、どうでしょう」
元幽霊のためにと、用意された空っぽの席。
先生はそれを見つめ、心配そうに頬に手を当てた。
僕も同じようにそれを見たが、どうにも彼女が人間となって現れた実感はないように思った。
○
休み時間。図書室へ本を返しにいこうと、教室を出た。ガヤガヤと騒ぐ生徒たちの声に、今日も平和らしいなんて思いつつも廊下を歩く。
図書室の受付に本を渡し、確認を取る。また新たな本を借りようかなんて悩んだが、そんな気分でもない。大人しく教室にもどろうと再び廊下を歩き始めたときだった。
見慣れない、ショートカットの女子生徒とふと目が合う。
「あ、君」
「えっ」
女子生徒はどきりとした顔をして一瞬動きを止めたかと思うと、慌てて踵を返し歩きだした。
女子生徒とは、もちろん元幽霊のことだ。
「待って。先生が心配してたけど」
「……」
僕の声にまた一瞬動きを止めたものの、やはりすぐに動き出した。返事もせずに。
その後も何回か声をかけつつ少し追ったが、彼女が振り向くことはなかった。
「……まるで別人だ」
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見毛 - すごい丁寧に書かれていてお話も面白い…とても面白いです…!律くんかっこいいなぁ…更新楽しみにしています (2019年4月2日 3時) (レス) id: fc0f2493d3 (このIDを非表示/違反報告)
ロイちゃん(プロフ) - めちゃくちゃ好きです!更新頑張ってくださいっ!! (2016年11月22日 6時) (レス) id: 0dbc3b26b1 (このIDを非表示/違反報告)
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作成日時:2016年10月23日 17時