10日目.混乱 ページ38
____あぁ、そうか。そういうことをするのか。
僕は神様を信じる質ではないが、今回ばかりはその神様の気配を感じざるを得ない。
そして僕のこの感情が良いものか、悪いものかということさえ、今の混乱した頭では判断が難しい。
そうか、そうか、と、全然理解できないこの状況を無理やり飲み込もうと必死だ。
本当だったなら、今すぐにでもエクボのもとへ行って僕のことを落ち着けてくれないかと頼みたい。
しかし、今、それはできない。
「……影山律です。同じクラスの」
僕の淡白な自己紹介に元幽霊の君はペコリと会釈する。
高揚によりうまく話せない僕と、もともとうまく話せない君の間は気まずい沈黙で埋まった。
が、そんなの、気になりやしない。
気にしたくても、だ。
「えっと……どの部活動に所属したいとか、そういう希望は今のとこある?もしよかったら一つ一つ紹介するよ」
しかし、分かっている。君は僕のことを覚えていないのだということ。それを必死で自分に言い聞かせ、さも初対面の相手かのように振る舞った。
とにかく冷静にならなくては。
相手は僕のことを知らない、そしてこの子はずっと入院生活をしてきたコミュニケーション初心者の人見知りの女子だ。
僕はそんな特殊な事情の新しいクラスメイトを迎える代表を務める、ただそれだけ。
「あの……部活、とか、そういうの……あんまり、馴染めそうにないので」
元幽霊は目をそらし、拒絶するようにそう言う。
その姿に、幽霊であったときのあの騒がしい笑顔は、面影も残っていなかった。
「そっか。でも、うちのクラスはみんな優しいよ。少ししたら慣れると思う。部活動もその時に入りたいと思えたら入ればいいし、別に入らなくても大丈夫だから」
「……うん」
あぁ、また沈黙は流れる。
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見毛 - すごい丁寧に書かれていてお話も面白い…とても面白いです…!律くんかっこいいなぁ…更新楽しみにしています (2019年4月2日 3時) (レス) id: fc0f2493d3 (このIDを非表示/違反報告)
ロイちゃん(プロフ) - めちゃくちゃ好きです!更新頑張ってくださいっ!! (2016年11月22日 6時) (レス) id: 0dbc3b26b1 (このIDを非表示/違反報告)
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作成日時:2016年10月23日 17時